藤田 香

ICT産業の強制労働対策のスコアが発表され、日本企業は低い評価を受けた。移民労働者の債務労働への対応や苦情処理の仕組みで大きな遅れを取っている。

 サプライチェーン上の強制労働の調査を行う団体「KnowTheChain(ノウ・ザ・チェーン:KTC)」は、世界のICT(情報通信技術)企業49社の強制労働への対策を評価し、結果を2020年6月に発表した。上位に入ったのは米HPや韓国サムスン電子など。世界平均は100点中30点と低かったが、日本の10社の平均は18点とさらに低く、世界平均を超えたのはソニーだけだった。

■ICT業界の強制労働対策の採点結果 (KnowTheChain実施)
世界の上位企業と日本企業を並べた。世界平均は100点満点中30点。日本企業は世界平均を軒並み下回った
[クリックすると拡大した画像が開きます]

 KTCには、国際人権NGO「ビジネスと人権リソースセンター」やESG評価機関サステイナリティクスなどが参加し、2016年以降、2年に1度、ICT、食品、アパレルの企業の強制労働スコアを発表してきた。2020年版は今回のICT企業を皮切りに、10月に食品企業、2021年3月にアパレル企業の評価を発表する。

 人権のベンチマークには、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に従って企業を評価する「企業人権ベンチマーク(CHRB)」があるが、KTCはCHRBに比べて強制労働に焦点を当てているのが特徴だ。「委託先などに移民労働者が多い業種は強制労働が起きやすく、問題が深刻化している」とKTC国内窓口の土井陽子氏は背景を説明する。

 KTCは企業の公開情報を基に、「コミットメントとガバナンス」「トレーサビリティとリスクアセスメント」「調達行動」「採用活動」「労働者の声」「モニタリング」「救済措置」の7テーマ、21項目で評価する。

斡旋料の払い戻しが鍵

 「日本企業は人権の方針や体制ができていても、実践を伴わないことが多い」と土井氏は指摘する。特に遅れているのが、「採用活動」「労働者の声」「救済措置」だ。

 注目しているのが移民労働者への対応。母国で仲介業者に高額な斡旋料を払い、来日して債務労働に陥るケースが少なくない。「採用活動」や「救済措置」では、企業が委託先企業に対して債務労働の調査や、債務労働があった場合に払い戻しを要請しているかなども評価する。

 例えばスコアが高い米アップルは、移民労働者の債務労働を「サプライヤー行動規範の重大な違反」と明言。サプライヤーの工場にそうした従業員がいた場合、サプライヤーに借金を肩代わりさせ、払い戻された金額まで報告書で開示している。

 ソニーが平均点を超えたのも、「RBA(責任あるビジネス連合)」という電子業界の団体に早くから加盟し、厳しい行動規範でサプライヤーを管理しているからだ。RBAは債務労働を禁止しており、ソニーは委託先工場の採用プロセスをモニタリングする仕組みを持っている。