労働者が声を上げるサービス

 強制労働対策で遅れる日本企業だが、改善のための動きも始まっている。人権侵害を受けた労働者が申し立てる「苦情処理メカニズム」の構築を支援するサービスが登場した。人権対策に取り組む団体「ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC:アスク)」は、中立の事務局に労働者がメールや携帯電話で苦情を訴える仕組み「ASSCワーカーズボイス」を開発し、2020年7月1日からサービスを開始した。

 苦情処理の仕組みは、日本企業が遅れている分野で、設けているのは不二製油グループ本社など一部の企業だけ。仕組みがあっても、委託先工場の労働者は委託元の企業に訴えるのに心理的ハードルがあった。そこでアスクのサービスは、携帯にアプリケーションをダウンロードすれば相談員とメッセージを交わせ、日本語や英語、中国語、ベトナム語など8言語に対応できるようにした。

 アスク事務局は苦情の深刻度に応じて、弁護士や専門家の検討チームを立ち上げて救済する他、委託元の企業と連絡を取りエンゲージメントを促す場合もある。どの国のどの工場で問題が起きているかを伝え、委託先工場との対話や調査を促す。

■ 労働者の声を吸い上げ救済する新サービス
■ 労働者の声を吸い上げ救済する新サービス
アスクが開発した人権侵害を受けた労働者が中立の事務局にメールや携帯電話で申し立てる「ASSCワーカーズボイス」の仕組み。右は専用の携帯アプリの画面
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 サービスを利用できるのはアスクの加盟企業。現在トヨタ自動車やイオンなど10社だ。委託先工場の数でサービス料は異なるが、数が少ない場合は月30万~40万円だという。

 サービス利用を始めるのが、ミキハウスブランドを展開する三起商行だ。70社以上の委託先に同サービス導入への協力を既に呼び掛け、委託先工場に順次導入する。2020年7月中に優先的に導入する数社を訪問し、アスク事務局と共に労働者に利用方法や注意点を説明する予定だ。

 新型コロナで、移民労働者の住環境悪化や賃金不払いなどの人権リスクが高まっている。「労働者の声を吸い上げるニーズが高まり、企業から問い合わせが増えている」とアスク理事の森翔人氏は話す。

 日本企業がサプライチェーンの人権問題で投資家から評価を得るためには、斡旋料の払い戻しや苦情処理メカニズムの構築が今後いっそう重要になるだろう。