酒井 耕一

米ハイテク業界で積極的に女性登用を進める。長期成長を掲げ、投資プランを公表して、投資家からの信頼を得る。

 米半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TI)が、「女性が活躍する企業」として評価を高めている。

 カナダの運用会社マッケンジー・インベストメンツは、ジェンダーを重視した投信の代表銘柄としてTIを挙げ、「取締役にも経営幹部にも女性を登用し、子供を持つ母親にとっても働きやすい会社」と評価する。

創業から「長期成長」掲げる

 TIの取締役会は11人で構成するが、うち4人の社外取締役は女性。経営幹部はCEO(最高経営責任者)をはじめ13人いるが、人事、法務、IT(情報技術)、IR(投資家向け広報)担当の上級副社長に女性が就いている。半導体を含むIT業界では先駆的な会社として注目度が高い。

 TIの創業は1930年。米テキサス州ダラスに本社を置き、従業員は3万人に及ぶ。社是に「長期成長」を掲げて、堅実に業績を伸ばす経営姿勢を貫いている。リック・テンプルトン会長兼社長兼CEOは「独自の社内文化を大切にして、従業員や顧客、地域社会、株主のすべてが満足する経営をする」と語る。

 2019年の業績は、売上高が143億ドル(約1兆5300万円)、純利益は5017万ドル(約53億円)。配当は3.6ドルと、前年より17%増え、16年連続での増配となった。

 財務体質の強化のため自社株買いも実施しており、19年の発行株式総数は9億3200万と、04年のそれと比べて46%減っている。ダイバーシティー経営と持続的成長を両立しているとして、ESG投資家の間での認知度も高まっている。

 半導体産業の動向は、IT業界全体の景気に左右されることもあり、設備投資や研究開発への投資の額やタイミングも見極めにくい。その中でTIは産業機器や自動車、通信機器など納入先を多角化して、1つの産業に依存しない体制を強化。今や取引先は10万社、商品点数は8万を数える。

産業機器や自動車、通信機器向けなど様々な半導体を製造する
(写真提供:テキサス・インスツルメンツ)

 投資家から信頼を得ているのは、毎年、投資戦略と結果を詳しく開示するため。20年2月の説明会では、過去10年に設備投資や研究開発、買収など合計810億ドル(8兆6000億円)を投資してきた戦略を総括した。

 特に産業機器向けの半導体では、医療や工場、航空機向けなど市場を13のセグメントで管理し、収入を増やしてきたことを開示。産業向け製品が全体の売上高に占める割合は36%と、過去6年間で6%増えたことを明かした。ラファエル・リザーディCFO(最高財務責任者)は「競争力を持つ分野に投資して高い利益を得るよう心掛けている」と言う。

 1万1000に及ぶ取引先情報も示し、このうち女性経営者の取引先が9%に及び5年前より比率が3%増えている点も強調している。