相馬 隆宏
損害保険ジャパン日本興亜は2月、北九州市とSDGsで協定を締結した。変革が必要なSDGsの実現にはリスクが伴い、保険のニーズが見込まれる。
SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりが企業から地方自治体へと広がっている。
環境先進都市と相乗効果
これまでに全国の自治体と100近い連携協定を結んでいる損害保険ジャパン日本興亜が、北九州市と締結した協定のテーマは環境とSDGsである。企業と自治体がSDGsをテーマにした協定を結ぶのは日本で初めてだという。SDGsを実現したい北九州市と、SDGsへの貢献を企業ブランド価値の向上や事業の拡大につなげたい損保ジャパン日本興亜の思惑が一致した。

損保ジャパン日本興亜CSR室の金井圭リーダーは、「環境先進都市の北九州市と、今、注目を集めているSDGsをテーマに協定を結ぶことで、ブランド価値の向上が期待できる」と話す。
損保ジャパン日本興亜は単独でも、事業を通じてSDGsに貢献してきた。例えば、降水量が一定値を下回った場合に農家に保険金を支払う「天候インデックス保険」や、交通事故を防止する企業向けテレマティクスサービス「スマイリングロード」を提供している。これまでに自社で培ったノウハウを生かし、市民のSDGs活動の推進や地元企業のビジネス展開を後押しする。
協定で具体的に取り組む項目は、再生可能エネルギーの導入拡大、環境教育や環境リスクに関わるコミュニケーション、SDGsの普及啓発や実践などである。第一弾として、環境やSDGsをテーマにした「市民のための環境公開講座」を2018年6月に開催する予定である。
ビジネスとして期待が大きいのは再エネの導入支援だ。北九州市は洋上風力発電の導入拡大を計画している。ただし、洋上風力は国内で実績が少なく、どんなリスクがあるかが分からない事業者が多い。
そこで、同社が事業者向けに説明会を開くとともに、リスク分析を支援する予定だ。保険の販売にも結び付ける。例えば、自然災害で風車が壊れて発電できなくなった場合に売電収入の減少を補填するといった商品のニーズが見込まれる。

北九州市で成功事例を作った後は、他の自治体に水平展開することを狙う。過去、自転車事故の増加や賠償金の高額化に悩む自治体と、自転車の安全利用に関して協定を結んだところ、同じ問題を抱える自治体に同様の協定が広がっていった。これに伴って、同社の自転車保険の販売が伸びたという。
金井リーダーは、「SDGsの実現にはトランスフォーメーション(変革)が必要で、リスクが生じる。保険などを提供することで市や地元企業の挑戦を後押ししたい」と話す。