「評判リスク」への対処を

 低コストで再エネを利用できる非化石証書だが、気をつけなければいけない点もある。それは投資家や消費者などステークホルダー(利害関係者)に対するアピールの仕方だ。

 太陽光パネルを自社の敷地内に設置したり、風力発電事業者から直接電力を購入したりする方法と非化石証書は大きく異なる点がある。非化石証書を利用する場合、どの地域のどの再エネ設備で発電したかを示すトレーサビリティー(追跡可能性)が担保されない。

 世界的に見るとトレーサビリティーを担保できる再エネ電力が一般的になってきたうえ、自社が直接投資した再エネ設備の電力が高く評価される傾向がある。そのため、非化石証書は不利な一面もある。

 また、石炭など化石燃料を用いて発電した電力と非化石証書を組み合わせるため、一部の環境NGOから批判を受ける「評判リスク」を負う可能性も否定できない。

■ 一般的な再エネ電力と「実質再エネ電力」の主な特徴
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 そうした中で「米アップルや独BMWなど欧米の大手グローバル企業のやり方はヒントになる」と中村氏は話す。再エネ証書(RECs)というゼロエミ価値を組み合わせながら、化石燃料を用いる火力発電を多く利用しているにもかかわらず、「再エネ先進企業」として評価を得ている。

 例えばBMWは、事業所の風力発電設備の写真をCSRリポートに大きく掲載。再エネの活用に積極的な様子を3ページにわたりアピールしている。同社が利用している再エネの多くがドイツの褐炭由来などの電力とRECsの併用だ。自社が投資した再エネの電力は数%にすぎない。だが、このリポートからはそうした印象は伝わってこない。

 ゼロエミ価値の取引制度に精通しておらず、温暖化対策についての知識を十分に持っていない投資家や消費者にとって、写真による視覚的な情報の方が理解しやすい。中村氏は、「同じ再エネであっても、評価や価値は様々である。見栄えの良い再エネ設備と、実質再エネ電力などの費用対効果の高い対策を効果的に使い分ける工夫が必要になる」と話す。

 ESGの取り組みで企業の評価を高めるためには、再エネの利用を増やすことも重要だが、SNSで話題が広まるような「インスタ映え」する写真を活用するといったしたたかさが求められそうだ。