「脱化石」の逆風直撃

 三菱重工業は5月8日、今後3年間の中期経営計画「2018事業計画」を発表した。2017年度の連結売上高は4兆1108億円だった。宮永俊一社長は会見で、「世界で戦うには5兆円の規模は必要」と話し、2020年度に売上高5兆円の目標を掲げた。

 ただ、足下では不安要素が顕在化している。収益の柱である火力発電事業機器の受注が振るわないからだ。

 2017年度の受注高は3兆8757億円で、前年度から約4000億円減った。その約7割が火力発電事業を含む「パワー」ドメインだ。石炭、石油、天然ガスなどを燃料に使う火力発電用タービンの受注が急減した。同社は、この傾向が続けば2020年には手持ちの受注がほぼ底を尽くと予想する。そのため新たな中計は脱化石の影響を大きく受けたものとなった。

関西電力姫路第2発電所のJ型ガスタービン。三菱重工業は、2021年から石炭火力発電事業が縮小すると予想し、サービス事業への転換や人員の再配置などを進める
関西電力姫路第2発電所のJ型ガスタービン。三菱重工業は、2021年から石炭火力発電事業が縮小すると予想し、サービス事業への転換や人員の再配置などを進める

 同社が65%出資する三菱日立パワーシステムズは採用抑制や配置転換などで2021年以降、従業員を現状から約3割減らす。すでにドイツでは300人の削減に着手しており、今後、日米でも人員削減に踏み切る。同時にタービンの製造だけでなく、発電所の監視や保守、CCS(CO2回収・貯留)までを含めた「発電サービス」に事業の主軸を移す。また、強みのある高効率ガスタービンや、需要の高まりが予測される水素を使える大型ガスタービンの開発などに力を入れる。

 米ゼネラル・エレクトリックと独シーメンスという世界のライバルとの競争は、今後、激しさを増す。そんな中でも宮永社長は、新たな中計を「持続的な成長軌道の第一歩」と位置付ける。こうした期待の裏付けにあるのは、宮永社長が2013年に社長に就任して以降、力を入れてきたガバナンス改革だ。「ガバナンス改革はほぼ完了した」と話す。

 社外取締役に元経営者や外国人を積極的に登用し、2015年には監査等委員会設置会社へ移行するなど、世界のライバルに見劣りしないガバナンス体制の構築を進めてきた。事業本部制からドメイン制に移行して組織の縦割り文化を廃止し、変化の速いグローバル市場の環境に合わせて事業ポートフォリオを素早く組み換える体制を敷いた。このガバナンスを成長の原動力にしたい考えだ。

 会見では、参加者から「過去の中計は未達に終わることが多かった」という声も上がった。同社では異例となる任期6年目に突入した宮永社長。これまで進めてきたESG経営の真価が問われる。