藤田 香
シドニー大学は国際産業連関分析を用いて自然資本を測定する方法を開発。東京都市大学はLCAで世界193カ国の環境負荷を金額換算する手法を開発した。
投資家の関心が、気候変動から水や森林などを含めた「自然資本」へと広がっている。そうした動きを踏まえ、企業が自然資本に与える影響をサプライチェーンを通じて測定し、開示する動きが始まった。英蘭ユニリーバ、インドのタタ、味の素などが、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が主導する「自然資本連合」が策定した「自然資本プロトコル」を使い、事業による自然資本への影響を測っている。

自然資本への影響を測る際に難しいのが、生物多様性への影響を定量的に測定することや、サプライチェーン上流まで遡ることである。最近、有望な測定方法が2つ発表された。シドニー大学のマンフレッド・レンゼン教授による多地域間の産業連関分析を用いる方法と、東京都市大学の伊坪徳宏教授によるLCA(ライフサイクルアセスメント)を用いた「LIME3」という方法だ。
レンゼン教授は各国政府が作った国際貿易の産業連関表をひとまとめにし、187カ国をカバーする巨大な国際産業連関表のデータベースを開発。これを使って企業活動が及ぼす環境影響をサプライチェーン末端まで測る方法を開発し、生物多様性への影響の定量評価も可能にした。
同手法を使い、木材やパーム油などの原材料や商品の輸入が原産国の生物多様性に与える脅威を定量的に算出した。日本企業はオーストラリアから紙パルプや木材を輸入している。日本の企業活動全体がオーストラリアの生物多様性に与える影響を計算したところ、34種を絶滅危機にさらすと算出。世界では約600種に影響を及ぼしていると算定した。

個社でもこの手法は活用できる。下図はある建設会社がCO2排出量を測定したもので、12次サプライヤーまで遡って算定した。

出所:地球環境戦略研究機関とシドニー大学