金額換算で費用対便益を知る

 一方、伊坪教授のLIMEは「被害算定型影響評価手法」という。企業の原材料の物量データから、事業活動で消費する資源や排出物質の量を計算し、それが「人間の健康」や「社会資産」「生物多様性」、植物などの「一次生産」に及ぼす影響を金額に換算して示す。環境負荷が社会や人体に与える被害金額は各国で異なるため、LIME3では世界193カ国の環境負荷をコストに換算する係数を開発した。従来のLIME2では日本の係数を使って海外の環境負荷の金額を算定していた。

■ 世界を対象に環境影響を評価するLIME3
■ 世界を対象に環境影響を評価するLIME3
企業の原材料の物量データから、環境影響を算定し、4タイプの社会的コストとして金額換算する。各国で環境影響と社会的コストの関係は異なるため、193カ国の係数を開発した
出所:東京都市大学の伊坪徳宏教授
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 既に日本企業5社がLIME3を使った算出を始め、2018年度中をメドに成果を発表できるという。それに先立ち、国の環境負荷の計算を試みた。下図は各国で1kWhを発電する際、燃料の採掘からプラント建設、発電に至るまでの環境影響を金額換算したもの。日本の環境影響は1kWh当たり0.04ドルで、CO2排出量の影響が大きい。中国やインドは石炭火力が多いため、PM(粒子状物質)による大気汚染の影響が大きい。

■ 各国の発電に伴う環境影響コストをLIME3で算出
■ 各国の発電に伴う環境影響コストをLIME3で算出
各国で1kWh発電時の環境影響を金額換算した。中国やインドは石炭火力が多く、PM(粒子状物質)に伴う大気汚染の影響が大きい
出所:東京都市大学の伊坪徳宏教授
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 この手法を企業が活用すれば、サプライチェーンで他国に与える環境影響の金額も計算できる。「環境対策のための設備の導入費用と比較して費用対便益を検討できる」と伊坪教授は言う。シドニー大学は地球環境戦略研究機関と共同で、国際産業連関分析とLCAを組み合わせ日本企業が活用できる手法も開発中だ。将来、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)にならって自然資本リスクを財務的に開示する時代が来るかもしれない。自然資本の金額換算に先手を打つことが必要だ。