この2月から3月にかけて、民間企業による官僚への高額接待の問題が相次いで報道された。民間人同士の接待は法律で禁止されているわけではないが、相手側に便宜を図り、組織に損害を与えた場合には、背任罪に問われることもある。今回は、接待で身を滅ぼさないための傾向と対策を論じよう。

(写真:123RF)

 その昔、大蔵省(現・財務省)の官僚が金融機関から過剰な接待を受け、その見返りに機密情報を提供したとして大規模な懲戒処分が行われた。もう20年以上前のことになる。その後、官と民との付き合いについては、襟を正して適切に行おうという意識が高まり、官と民の間だけでなく民間企業同士の接待についても、コンプライアンス研修などで、その正しい運用について注意喚起が行われてきた。それにもかかわらず、今回、再び監督官庁の官僚とその規制下にある民間企業との間での接待問題が発生したのである。

 以下は、取引先と良い関係を築くための「接待のテクニック」について語る民間企業の社員の(架空の)会話である。この術中にはまると後々、大きな問題になる可能性がある。

佐藤 一人7万円もする高額の接待って、する方もする方だし、受ける方も受ける方でどちらにも問題がありますよね。
田中 ああいうのは困るね。接待はもっと賢くやらないと。
佐藤 田中部長。それはどういう意味ですか? 賢くやる方法があるというのでしょうか。
田中 そう。接待というのは、もっと長期的かつ計画的かつ合法的にやらなくてはいけません。
佐藤 と、おっしゃいますと? 何か良いやり方があるのですか。
田中 大企業の社員というのは、入社してしばらくすると将来、誰が偉くなるかはあらかたわかるでしょ。
佐藤 まあ、そういわれてますね。
田中 偉くなった後に、接待なんかしてもダメなんです。20代や30代の前半の頃から、しっかりとマークをしてお食事に誘うんです。
佐藤 そうか。若くて給料が安いときにおしゃれなレストランとかに連れて行ってもらうとうれしいですよね。
田中 いや。行くのは安い居酒屋。しかも割り勘。1年に1回くらい。接待ではなく、あくまでビジネス環境や新技術についての情報交換です。したがって、相手がうちの会社とまったく関係のない部署に異動したときも欠かさずに、定期的に実施するのです。
佐藤 それだと接待を受けるほうはうれしくないのではありませんか?
田中 相手にとってメリットのある良い情報を提供することが大事です。そして、あくまで情報交換ですから、値段の高いお店に行こうとすると警戒されて断られます。しかし、数年もの間、居酒屋にいったら、その後に少しだけ良いお店に変えるんです。ただし、会社が包括契約していて安く済むという言い訳をつけて。表向き、費用は割り勘ということにします。
佐藤 おお。
田中 その後、会社で経営している接待用のお店に行きます。同様に、会社の経営だから社内割引で特別に安いという言い訳をつけて。こちらも割り勘ということになります。
佐藤 なるほど。
田中 これは「フット・イン・ザ・ドア」というテクニックを使っています。断れないような小さい依頼を受けてもらい、だんだん大きくしていきます。そうすると相手は断らないんです。
佐藤 この途中で、何か業務上の便宜を払ってもらったりするのですか?
田中 しません。偉くなる人には、ほんとに困ったときに1回だけまっとうな形で正式に大きな依頼をするのです。それまでは貸しをため込みます。
佐藤 そのために、ずっと接待し続けるわけですか? でも、割り勘だから相手はこちらに便宜を図るようなことはしないのでは?
田中 相手はとっても賢い人です。したがって、表向きは割り勘でも実際には、おごってもらっていることは百も承知なわけで、その借りはどこかで返さなくてはいけないと思うのです。これを「返報性のルール」といいます。これも重要なテクニックです。
佐藤 なんと。
田中 このような接待を長い期間をかけて将来有望な人すべてに行います。そうすると、相手側の有力な地位にある人のほとんどが、当社に借りのある人ばかりになります。必要なときには、重要な動きの背景事情を情報漏洩にならないギリギリのところまで教えてくれます。そして何かビジネスをやるときにも、当社を必ず候補先企業の一つに選んでくれます。
佐藤 おお。
田中 相手の上司も、その上の上司もみんな問題のない情報交換会として、この接待を経験していますから、誰も問題にしません。これを長年やり続けることで、親密で盤石な関係を築くのです。それから、幹部にならない一般社員については再就職先の世話など、また別の方法でアプローチします。こちらも、とても重要ですからね。
佐藤 これだと問題になることもなさそうですね。恐れいりました。