本ケースにおけるコンプライアンス上の問題とは?

 取引先からどうやって好意を引き出すかは、組織にとって死活問題である。このため、違法にならないように、取引先に迷惑をかけないように、さらには自社が確実に有利になるように、費用対効果の良い接待を行おうと戦略的に考えるものである。したがって、接待を受ける立場にある者は、よほど注意しておかないと、相手の術中にはまってしまうのである。当人自身も深く意識しないまま特定の会社に便宜を図ってしまい、後にそれが問題になることがある。

 国家公務員の倫理規程では以下のように定められている。

倫理規程では、国家公務員が、許認可等の相手方、補助金等の交付を受ける者など、国家公務員の職務と利害関係を有する者(利害関係者)から金銭・物品の贈与や接待を受けたりすることなどを禁止しているほか、割り勘の場合でも利害関係者と共にゴルフや旅行などを行うことを禁止しています。また、国の補助金や経費で作成される書籍等、国が作成数の過半数を買い入れる書籍等について、国家公務員が監修料等を受領することも禁止しています。利害関係がない場合でも、供応接待を繰り返し受ける等社会通念上相当と認められる程度を超えて供応接待又は財産上の利益の供与や、公務員が行った物品若しくは不動産の購入若しくは借受け又は役務の受領の対価を会社が負担することも禁止されています。
(人事院のウェブサイトより)

 上記の会話のケースの相手が、大手企業の社員ではなく国家公務員の場合、倫理規程に触れるか触れないかは微妙なところとなる(国家公務員以外にも地方公務員、独立行政法人、日本郵便、JR北海道・四国・貨物、JTなども倫理規程の対象である)。基本的な見解としては割り勘だし、相手が利害関係者の立場にいるとも限らない。食事をしたことと公務員の職務には直接の関係も見られない。そのようなことから、企業側としては“抜け目ない”接待(情報交換会と言い張るだろうが)のやり方といえるだろう。

 ただし、利害関係がない場合でも、供応接待を繰り返し受けるなど社会通念上相当と認められる程度を超えた供応接待は倫理規程の対象であるから、社会的な批判を受ける可能性は十分にある。一方、接待を受ける立場の公務員は、倫理規程違反に問われなかったとしてもやはり問題がある。特定の企業との関係が深くなりすぎて、意思決定が歪む可能性が高まる。

 一方、民間人同士の接待は、法律で禁止されているわけではなく、個々の企業の服務規程や倫理規程において定められている。ただ接待を受けたことによって、相手側に便宜を図り、組織に損害を与えた場合には、背任罪に問われることもありえる。たとえば、相手側の製品が競合に比べて明らかに劣っているにもかかわらず、接待を受けた見返りにその製品を採用し、会社が損害を被ったといった場合である。とくに調達や購買の担当者、いろいろな意思決定に関与する上級幹部などは、常に自分が特定の会社にコントロールされていないか意識しなければならない。