問題の発生を抑制する3つのポイントとは?

 それでは、どうすれば、このような問題の発生を抑制できるだろうか。次の3つがポイントである。

(1)問題行為をしてでも成果をあげようとする者を幹部に登用しない
(2)マイナス情報が上にあがってきやすい状況を作る
(3)内部通報窓口の信頼性をあげるとともに、調査能力を向上させる

 幹部登用の問題については、すでに本連載 「いわく付き社員が役員に就任、それこそが最大のコンプラリスク」で言及したので、ここでは(2)と(3)について語っておきたい。

 マイナス情報が上にあがってきやすい状況、この実現こそ心理的安全性の鍵となる。何か指摘をしたからといって、クビになったり、左遷されたり、人事考課で減点されたりしない安全が確保されている職場。このような職場ができれば、問題行為を企てること自体が減るだろう。しかし、恐怖で人を動かす習慣の会社が変わるのはかなり難しい。「恐れのない組織」では、組織を恐れのない状態に変えるためのリーダーの方法論として、以下のようなことを挙げている。

  • 状況的謙虚さを示す
  • 探究的な質問をする
  • (意見が自由に交換されるための)仕組みとプロセスを確立する
  • 感謝を示す
  • 失敗を恥ずかしいものではないとする……など

 これらが実現できれば素晴らしいが、できない人もいる。しかし、誰でもすぐにできることはある。それは、マイナス情報が上がってきた際に、決して「怒らない」ことである。そして、その内容が後に間違っていたことが判明しても絶対に「怒らない」。一方で、問題があることを知っていたにもかかわらず口を閉ざしていたことに対しては「改善を要求する」。

 これを管理職や幹部の共通の思考と行動の習慣にすべく、全員にトレーニングを続けることである。これだけやれば、かなりの成果が出る。

 さらに、実務的に重要なことは、(3)の調査能力を上げることである。普段、何の連絡もない本社の監査部から、地方拠点にいきなり連絡が入れば、拠点はパニックになる。したがって、普段から定期的に訪問したり、情報交換の機会を設けたりするといったことをやっておき、監査部の人がいつ連絡してきてもおかしくない状況を作っておかなければならない。

 この一方で、分野ごとに調査のエキスパートを養成しておき(または外部のサポートを受け)、表向き定例監査の振りをしながら、要領よく短期間に必要な調査を済ませてしまうのである。時間がかかったり、大げさにたくさんの人にヒアリングしたりすると、現場の人は「何かあったな!?」といぶかしく思い、内部通報がばれてしまう。そうすると内部通報への信頼性、さらには組織内の心理的安全性が下がってしまうのである。

 心理的安全性を高めることは、コンプライアンス問題を早期に発見し、対処していくうえでたいへん重要である。規定の整備や研修も必要だが、組織の心理的安全性が低いままだとほとんど無駄になってしまう。はたして、皆さんの会社は、安心して上位者や通報窓口に報告できる組織だろうか。