本ケースにおけるコンプライアンス上の問題とは?

 この佐藤さんのように、テレワークが求める新しい働き方に十分に対応できておらず、危険な状況のまま働いている人が多数存在する。注意すべきポイントは、(1)リモートワークにおけるハラスメント(通称リモハラ)、(2)意図しない情報漏洩、(3)発言がそこだけ切り取られて拡散される可能性――などである。

 リモートワークにおいては、上司が部下に対して過剰な頻度で報告を要求したり、あまりにも多くのオンライン会議を開催したり、チャットツールへの即座の対応を要求したりすることなどは、パワーハラスメントになりえる。また、テレワーク中の従業員の部屋を映すことを要求するなどの過剰な監視もハラスメントに認識されうる[注]

 さらには、オンラインでの業務では、うっかりすると、映してはいけないもの(会社や個人の信用を失う可能性のあるもの)を多くの人にさらす可能性があることや、冗談のつもりで言ったことが変な形で切り取られ拡散されるといったリスクにも注意しなければならない。これらは、ただちに違法行為になるわけではないが、会社や個人の信用を損ない、大きなダメージを及ぼすことがある。

[注]『ビジネス法務』誌(中央経済社) 2021年7月号 特集1「新ガイドライン公表で見直す 最新! テレワークの労務管理」24ページ参照

リモハラはマネジメントスキルの問題

 上司の立場で考えると、部下が十分に成熟しており、任せたことを期日までにしっかりと納品してくれるのであれば、頻繁な報告や過剰な監視をしようとは思わないものである。しかしながら、未成熟で、ある程度監視下においておかないと“サボる”のではないかと思われる部下に対しては、過剰な監視をしてしまいかねない。とくにリモートワークになると、顔が見えないために不安感は加速してしまう。

 このようなことにならないためには、最初の業務の導入場面において、明確なゴールや途中段階でチェックポイントの設定、進め方の方法についてのアドバイスと合意、定期的な進捗管理と修正の場の設定――などを確実にしておき、基本的には部下に仕事を任せなくてはいけない。したがって、ハラスメントになってしまうのは、コンプライアンスの問題というよりは、マネジメントスキルの問題と考えた方が適切である。

 また、リモートワークの場合は自宅からアクセスすることも多い。そうすると、オフィスで働くときよりも公私の区別が難しくなる。基本的にテレワークでは、仕事で使用するパソコンと私的に使用しているパソコンは分けてもらっているはずだとは思うものの、そのあたりの管理をしっかりしていないと、私的でかつ流れてはいけないようなものが外部にさらされる可能性がある。