本件のコンプライアンス的問題とは?

 この1年ほど、国家公務員への接待問題が社会をにぎわせている。ところが、経済界では「え、本当? そんなこと、まだやっていたの」といった受け止め方がかなり強い。というのは、20年ほど前に起った金融機関と大蔵省(当時の監督官庁)の接待およびその見返りとしての情報提供によって多くの逮捕者が出たことから、このような事態を起こさないようにするために2000年に国家公務員倫理法が施行され、さらには倫理規程が制定されて、多くの会社は、それらを真面目に守ってきたという意識があるからだ。

 倫理規程では、国家公務員が利害関係を有する者(利害関係者)との関係を規定し、問題を引き起こしそうな行為を禁止している。よって、ほとんどの企業では、役人への接待は基本的には控えており、一緒に食事をする際も、比較的安いお店を選び、かつ割り勘で支払うようにしてきている。しかし、今回、いくつかの事件が発覚し、「あら、接待しても捕まらないんだっけ?」とむしろ驚いた会社員がたくさんいたということなのである。

 特定の国家公務員との関係において、企業側の人間がまず気にすべきことは、自分が先方から見て「利害関係者」に当たるかどうかである。利害関係者と非利害関係者では、倫理規程が規制している行為の内容が異なる。

 あなたが公務員側から見て利害関係者になるのは、先方が「自社の事業の所管部局の担当職員、立入検査、監査又は観察を行う担当職員、不利処分や行政指導を行う担当職員、許認可等や補助金の交付を行う担当職員、契約事務の担当職員等」の場合である。この場合には、金銭の交付や物品の贈与、接待、車での送迎など無償でのサービスの提供、マージャン等の遊戯、ゴルフ、旅行に一緒に行くこと(たとえ公務員が自分の費用を負担した場合も)、金銭の貸し付け、無償での物品や不動産の貸し付けなどが禁止されている。

 一方、利害関係者に当たらない場合は、上記の禁止事項は適用されない。しかし、そうであっても、繰り返し接待や物品を提供するなど社会通念上相当と認められる程度を超える場合は、国家公務員倫理法・倫理規程違反となり、相手方の公務員は処分されることになる。最近のデジタル庁の幹部のケースがこれにあたる。

 本件の難しいポイントは、これらの接待による罰則が公務員側の処分にとどまっており、企業側には、事件が明るみになることによる社会的な批判以外には大きなマイナスがないことである。もちろん、相手側の公務員が処分されることは重大事件で、その後の監督官庁との関係が悪化することはありえるが、そのダメージがあまりないと見込まれる場合には、接待等に対する抑止力が働きにくい構造がある。したがって、今回、多くの事件が発覚し、とくに大きな罰則が科せられない(あくまで社内処分にとどまる)ことから、「接待するのもあり!?」という反応が生まれたということになる。

 なお、併せて知っておいたほうがよいのは、贈収賄である。これは単なる接待とは異なり、公務員に、公権力の行使に関して何らかの便宜を図ってもらうために、金品などを提供する賄賂による職権濫用・法律違反に関する犯罪である。つまるところ、見返りを求めて公務員に賄賂を贈るもので、こちらは刑法上の犯罪となり処罰される(仮に見返りを求めなくても、公権力の行使に関して金品を提供することを公務員が要求したり、公務員と約束するだけでも単純贈収賄となる)。基本的にアウトだから、絶対にやってはいけない。