接待問題を起こさないために

 昨今の接待問題の背景には、大蔵省の事件から20年もたち、時間の経過とともに役人側に気の緩みが生まれたことが背景にある。とはいっても、役人側の意識のなかでは「接待されたからといって、便宜を図ることなどあり得ない」と真剣に考えている人がいるかもしれない。

 しかし、意識的にはそうかもしれないが、無意識的にはそうならない。心理学の古典『影響力の武器』は、人が必ず従ってしまう法則の一つとして「返報性の原理」を挙げる。返報性の原理とは、人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱くという心理のことをいう。接待を通して小さな貸しをつくり、後に大きな見返りを得ようとする形で使われるのだが、接待は実のところ、よく効くのだ。

 そのようなことから、プラグマティックな視点に立てば、接待によって得られるメリットと問題発覚時の損害やバレる可能性などを測定しててんびんに掛け、国家公務員に接待攻勢をかけることを決断する選択肢がないわけではない。

 しかしながら、そのようななりふり構わぬ接待は、たとえ成功したとしてもその実行者であるあなたが社内で尊敬(評価)されるとは限らないし、その情報はいずれSNS(交流サイト)などを通して拡散されるだろう。そして内部通報窓口(外部の窓口も含め)もきちんと対応するはずだ。さらに、こちらのほうが重要だが、このような接待に応じる脇の甘い国家公務員は高い確率で将来失脚するだろう。

 これらのことを考えると、ダウンサイドリスクはことのほか大きく、期待値は存外に低いのである。しっかりと倫理規程を読み、規程の趣旨に反する接待は避けたほうが明らかに得である。もちろん、損得以前の問題として善悪の観点から、決してお勧めできない行為であることは言うまでもない。

(監修) 浅見隆行弁護士(アサミ経営法律事務所)