非正規雇用の待遇底上げのキーワード「同一労働同一賃金」。この原則に沿えば、正社員と非正規の職務を明確に分離しなければ待遇に差を付けることは認められない。日本でも非正規雇用の多い流通・サービス業では職務分離のノウハウを持っている。

(写真:123RF)

 非正規雇用の待遇底上げでよく使われるのが「同一労働同一賃金」という言葉です。

 

 全く同じ仕事をしているのに、正社員は給与が高く、非正規は安い、などと言うことがあってはならない、という意味で用いられることが多いですね(欧米では少し違う意味合いがあるので、後ほど説明します)。

混ぜるな危険!

 では、必ず同じであるべきかというと、以下のような差異がある場合は、違っていても仕方ないと、最高裁は判決で述べています。

1.業務内容
2.責任
3.配置変更範囲
4.その他の事情

 ただ、1に違いがある場合「同じ仕事」とは言えないので、これは除外しておきます。4は意味が分かりづらいですね。これは、「会社の都合でたまたまその仕事をやらねばならない」場合などがあたります。研修時期だとか、欠員者の緊急応援とかは分かり易い例でしょう。

 それ以外としては、連載第2回「人事制度の基礎を復習①職能主義と職務主義の根源的な違い」で書いた「ソニーのアメリカ進出」の話など思い出してください。混成型ラインを統率できる職長が、新工場に赴任したが、その工場は単線ラインしかなかった。なのでしばらくの間、能力を出し切れず、易しい仕事をせねばならなかった。ただ、じきに工場を拡大し、混成型ラインを組むことになるから、給与ダウンはさせなかったということ。このほかにも、キャリア形成上の一ステップとして赴任した場合なども、「過去の給与の連続性」という観点で、非正規雇用との格差が認められてしかるべきでしょう。

 さて、1と2について、復習もかねてもう一度考えてみましょう。

Q17.欧米ではなぜ、同一労働同一賃金問題が起こらないのでしょうか。

                               

 連載の中でもう何度も出てきましたね。日本の場合は、ポストと職務、給与が結びついていません。例えばある会社の営業一課に「ヒラ」というポストには、新人、非正規、リーダー、部下無し管理職など、さまざまな等級の人が混在し、彼らは職務も給与も異なります。

 よく見れば、職務内容は異なっている場合が多い。だから、裁判ではこの点をしっかり見るわけです。ちなみに、「2」の責任という点も、私としてはそれが異なると、最終的には職務内容にも違いが出るのではないか、と感じています。

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 一方欧米の場合は、職能等級などありません。だから、ヒラというポストに複数の等級の人を押し込んだりできません。賃金も仕事も、ポストで決まるようになっています。例えば、安い給与で単純な仕事をする人は、下の図なら「アソシエイト」というポストになります。責任や職務内容が異なるなら、ポストも異なる。だから分かり易いのですね。

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 そして、正社員だろうが非正規だろうが、「アソシエイトのポスト」に就くなら安い給与でしかるべきでしょう。高い給与で処遇したいのであれば上のポスト、例えば、ジュニアやサブリーダーなどに任用することになります。このようにポストと職務・責任をパッケージにしておけば、一目瞭然で分かりやすいでしょう。

 こうしたポスト=職務・賃金という明解な体系を作らずに、同一ポストに混在させることが日本の問題なのです。何度も言いますが、ポストというのは本来、職務内容に応じて作るものなのだから、欧米の雇用スタイルの方があるべき姿と言えます。

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