日本では当たり前の「社内労働組合」は、実は世界では珍しい存在だ。欧州では業界横断組合が経営者団体と一括協議し、横並びでストライキなどを行うから労働者の権利が守られやすい。実は日本型の組合がデフレの遠因にもなっている。なぜか。

(写真:123RF)

 前回まで、日本型雇用の構造から宿命的に起きる5つの問題について、どうしてそれが起こるのかを説明してきました。こうした構造的な話とは別に、もう一つ日本型には根深い問題が残っています。それが「社内労働組合」です。

 多くの日本人は「労働組合って社内にあって当然じゃないの?」と思うでしょうが、これは欧米(とりわけ欧州)では特異なことです。

社内に労働組合があるのはとてもおかしなこと

 1972年にOECD(経済協力開発機構)が日本型雇用についてのレポートを報告しています。当時、戦災からあり得ないほどのスピードで経済復興していく日本は、欧米にとって現在の中国と同様に、畏怖の対象でした。その秘密を探るべく、OECDは日本を調査し、日本型雇用の3つの特色を示唆しています(この辺りは人事のスタンダードな知識なので、覚えておいてください)。

 3つの特色とは、「年功序列」「終身雇用」「企業内労働組合」でした(後年これに「新卒一括採用」を加えて4つの特色などという人もいます)。そう、この時すでに、社内に労働組合があることが、欧米の人の目には奇異に映ったということです。

 欧米では、企業と関係なく(というか企業横断的に)、「同じ職業の人」もしくは「同じ産業の人」全員が一つの労働組合に入ることが多いのです。

 どうしてそんなことをしているのでしょうか。

 そのわけは、「コレクティブ・バーゲニング」という言葉にあります。日本では団体交渉と訳しますが、それでは意味が分からないでしょう。直訳すれば、「集めて、売る」。整語とするなら、「集合取引」となります。市場にいる労働者を一人残らず集めて、その労働力を経営者に高く売る。これが、欧州の労働運動の基本原理なのですね。誰一人の脱落もなく労働者を集めたら、経営も襟を正さないとなりませんね。それはとても強力な交渉力を持ちます。そういう「労働力の商取引」を行うのが労働組合ならば、社内に閉じているのはおかしいでしょう。だから企業横断的な存在となるのです。

 この「コレクティブ・バーゲニング」を「団体交渉」と意訳してしまったのは皮肉なことです。団体交渉という言葉であれば、2人以上で経営者と話し合いをするだけのことであり、それだと社内に存在しても何の違和感も湧きません。

とまれ、欧州では賃金や労働時間、休日休暇など、労働者の基本的な権利向上に関しては、社外まで広くつながる労働組合が、経営者団体と一括協議して決めるという仕組みが出来上がっています。結果、どの企業に属していても、待遇に関しては公平な状態が保たれているわけです。

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