20代からどんどんポジションが上がる会社と、何年も知識と経験を積んでようやく一人前と認められる会社の差はどこにあるのか。実はキャリアには3つの類型があり、形の異なる会社の人事制度を真似してもうまくいかない。

(写真:123RF)
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 この連載もいよいよ最終コーナーにさしかかりました。

 今回から、いよいよタイトル通り、人事の組み立てについて考えていくことにします。人事に必要な基礎知識から、雇用を取り巻く社会構造、欧米など他国との比較、そして歴史を一通り学んできました。今までのように「自社」ばかりを見るのではなく、広い視野の中で、より有意義な人事の在り方を考えられるのではないでしょうか。

「どこでも通用する力」なんて土台無理な話

 さて、人事の組み立ての第1話は、「キャリアの構造」をテーマにします。キャリアには携わる事業によって3つの形があり、いずれの会社もそのどれかに当てはまるはずです。ところが、多くの人は、キャリアには3類型があることに気づいておりません。その結果、形の異なる会社でうまくいった人事制度を、そのまま自社にも取り入れ、「あれ?なんでうまくいかないのだろう」と難渋してしまうのです。

 それは、欧米でうまくいった人事制度を日本に直輸入してうまくいかないのと同じですね。

 さあ、それではキャリアの構造について初歩から考えてみましょう。

Q1.昨今、「どこの会社に行っても通用するキャリアを身につけろ!」などとよく言われます。「どこの会社に行っても通用するキャリア」とは、いったいどのようなものでしょうか?

 俗に「企画力」とか「分析力」とか「リーダーシップ」とか「対話力」などと呼ばれる言葉が頭に浮かびませんか?こうしたどこでも通用する言葉を、「ポータブル(持ち運べる)スキル」などと呼ぶことがあります。

 ただし。現実問題で考えてください。これらのポータブルスキル満載で今まで原子力発電の営業を担当していた総合商社の営業(33歳)が、転職して明日からメガバンクの法人融資担当部署で営業ができるでしょうか?

 確かに同じ「営業」という仕事です。転職先にも彼と同じ大学の同級生は多々いるでしょう。でも、総合商社の彼は、銀行では全くと言っていいほど仕事ができないはずです。

 当然ですね。彼は原子力に関する知識や業界作法などは熟知しておりますが、金融関連の知識はまるでないし、業界慣行などにも慣れていないからです。

 この事例で、キャリアの要素(能力)というものが分かるのではありませんか?

 そう、職業能力とは、「どこでも通用するようなヒューマンスキル」に分類される要素と、「ある業界でしか通用しない知識・経験・風習など」から成るのです。パソコンで例えるなら、前者はOS(基本ソフト)、後者はアプリケーションとなるでしょう。いくら高性能のOSを持っていたとしても、アプリケーションが全く異なる世界では通用しません。これがキャリアの現実です。

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 例えば、物理学者と化学者では、必要となる専門知識が異なるため、簡単に両者の仕事を入れ替えることはできないとすぐに分かります。ところが、先の例で言うと、同じ営業職だから入れ替えられそうな気がしてしまう。でも、内実は研究者と同じで、それぞれが全く違う専門知識・専門能力の塊なのですね。

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