昇進の早い「TypeB」に続き、知識や経験の積み上げが重要な「TypeA」の人材管理について考える。年功昇給を大きくし、長期勤続を促すのが定石だが、中途が入り込みにくいことが課題。そして「どちらもそこそこ」の「TypeC」は、さらに3タイプに分かれる。

 事業によって「キャリアの形」が変わってくるという話を続けます。  前回取り上げたTypeB企業に続いて、ここでは、最も日本型と思われるTypeA企業の人事管理を考えることにしましょう。

業績が倍増するなら給与も大幅アップできる

 例えば、原子力発電のプロジェクトリーダーを任せる、と言われても今日明日でできるようにはなりませんよね。同じように、大手企業のファイナンスなども一朝一夕にできるわけがありません。

Q1.なぜメガバンクや総合商社はどんどん給与が上がるのでしょうか?

 メガバンクや総合商社の仕事はすべてTypeAのキャリアとなり、知識や経験を積み上げることによって、難しい仕事がこなせるようになります。経験に応じて、売上高や管掌規模が拡大するのがその特徴と言えるでしょう。ここには大手メーカーや総合商社、銀行などの重厚長大産業が入ります。

 銀行を例にすれば、融資する相手を、個人→中小企業→中堅企業→大企業と社員の成長に応じて変えていくに従って、扱う金額は数倍、時には数十倍にも増える。その間に金融知識も拡充し、当然給与も上がる。こうして、10~15年かけて、一人前に育っていくことになります。

 前述した通り、TypeA企業は、育成した人材が退職してしまうと、同レベルの人材を育てるのに10年以上の歳月がかかります。だから、中途退職が減るように長期勤続型の人事制度が必要となるのです。

 その一方で、階段を上れば上るほど、売上高や付加価値が増えるので、その分給与を大幅に上げても、経営的には問題ありません。そのため、年功昇給を大きくする仕組みを作り、長期勤続を促すことになります。そして、上らせれば上らせるほど会社としてはインカムが増えるため、企業も後続育成に進んで取り組む、という好循環が生まれるのです。

Q2.なぜ総合商社やメガバンクの営業職は中途採用が少なかったのですか?

 総合商社やメガバンクでは当然、採用は新卒が中心となるでしょう。途中から入ったとしても、同年代の膨大な知識の積み上げには、追いつけないからです。例えば、メガバンクであれば、入社1~ 2年の間に簿記、証券外務員資格、銀行資格、ファイナンシャル・プランナーなどの資格を取り、窓販業務で、「融資の基礎ルーティン」を学びます。そのうえで、20代中盤は小規模法人相手に、BS(貸借対照表)の読み方、与信、経営者との応対術などを身につけ、中堅企業では協調融資や長めの手形処理などを覚えていく。 こうした積み重ねなしに、30歳で中途入社して、大企業の法人融資を任されても全くついていくことはできないでしょう。

 総合商社などだと、鉄鋼やエネルギー、穀物、金融などの事業部に分かれ、銀行同様にそれぞれが専門知識を積み重ねていきます。なので、30歳過ぎると、社内であっても穀物事業部からエネルギー事業部といった事業部をまたぐ異動は極端に少なくなっていきます。

 「営業」という同じ職務名称のため、右から左に移れそうに思いがちですが、こうした知識積み上げ型の長期育成事業では、それはとても無理です。すでに書きましたが、同じ科学者でも、物理領域の研究者が化学領域に移れないのと同じ、と言えば分かるでしょうか。

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