TypeA企業もメインでない職務は中途補充をする

Q3.時折、重厚長大企業が中途採用をしていますが、どうしてですか?

 では、こうしたTypeA企業は中途採用を行っていないのでしょうか。ここが研究者や行政官はじめ、多くの日本人が間違えているところです。例えばトヨタやソニーのような大手メーカーでも、従来から新卒比2~ 3割程度、中途採用をコンスタントに行ってきました。メガバンクや総合商社は時期により異なるのですが、それでも多いときは新卒比3割程度の中途採用を行ったりもしています。

 なぜそのようなことが起きるのでしょうか。

 その第一の理由は、「なんだかんだ言っても新卒一括採用が最も合理的」の回で説明した「ヨコヨコタテヨコ」の社内補充ができない、レアな職務の補強です。例えば、M&A、商品ブランドのコントロール、AI技術、財務スペシャリスト…等々、稀少なスペシャリストは社内補充ができないために、外から採用せざるを得ません。自動車メーカーを例にとると、その昔はITや塗料、電池関連なども人材層が薄かったために、多数、中途採用を行ってきました。昨今では、大手全体が、30代の「明日の管理職」である女性の採用に力を入れておりますが、こちらも、社内では稀少という意味では同じでしょう。

 こうした稀少人材ではなく、メインストリームの職務でも、中途採用は行われています。理由として挙げられるのは、
1.( 大手メーカーであっても)エンジニアは常時、人手不足で採用ニーズが高い
2.不況により新卒採用が抑制された年代の人員補充
3.モノカルチャー化して硬直した社内に新風を吹かせる
などが大きな理由と言えます(3についてはうまくいかないケースが多いのですが)。

「蓄積の壁」を乗り越える採用手法

 ただ、TypeA企業は年齢に応じた知識と経験の積み上げが必要な産業で、途中から加わるとその蓄積の壁に突き当たり、ついていけないとすでに書きました。この「蓄積の壁」を乗り越えるような採用手法とはいかなるものか。これを詳しく書いておきます。

 ここに、雇用やキャリアの一つの法則が見いだせるので、「人事の組み立て」としては大きなツールだと心してください。その極意は「蓄積の壁」が薄い人材をどう探すか、にあります。年代別に考えてみましょう。

 まず、新卒1~ 2年目は、多くの大企業は「雑巾がけ」として社会人経験を積ませることを第一義にしています。この時期は、正直、どこの企業でも「社会人としての洗礼を受けていればいい」ということになる。そこで、超若手採用は、「社会人であればあまり経験を問わない」という方式となる。これが俗に第二新卒採用と呼ばれるものです(ただ、1~ 2年目でも「蓄積の壁」がかなり厚い銀行や商社は第二新卒採用をあまりやりません)。個人キャリアの側から見れば、この時期までは、未経験の業界・職種にチャレン ジできる可能性があると言えるでしょう。

 次に、20代中盤となると、仕事もそこそここなせるようになっています。「蓄積の壁」もだいぶ厚くなっているので、中途採用をするなら少なくとも同職経験者、という絞られ方がされます。ただ、業界が異なってもかまわないというケースはまま見られます。逆に職種は異なってもいいけれど、同業界の経験者というケースもあります。つまり、業界か職種のどちらかが同じであることが条件となります。この時期を人材ビジネスにおいては、「素養系採用」「素養系転職」などと呼んでいたりします。

 個人キャリアの観点から言うと、この時期までであれば、職種か業界のどちらか一つなら変えることが可能となります。

 20代後半になると、もう職種変更はかなり厳しいでしょう。業界については、ドンピシャでなくとも、周辺産業・関連産業であれば採用されることが多いです。個人のキャリアとしては行ける範囲がだいぶ狭まってきましたね。

 そして30歳前後になると、同業同職内での採用しか通用しなくなります。この時期の補充は、小規模企業や取引先など「近い」関係からの採用が増えていきます。個人のキャリアから見ると、「業界内で中小企業から大手に行ける」「サプライヤーから最終メーカーに行ける」チャンスとなるでしょう。

 そこから先、30代前半だと「同業×同職×同規模」、30代中盤だと「同業×同職×同規模×同役職」とどんどん絞られていきます。 TypeA企業だと、こんな感じでターゲットは絞られていき、30代後半では(前述の稀少職を除くと)メイン領域で中途採用はほぼ行われなくなります。

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