里山としての中小企業

 さて、TypeCの最後は3の中小企業です。おさらいとなりますが中小企業がTypeCになる理由は
a.そもそも深い事業ノウハウがない
b.ノウハウや事業の強みは社長に集中し、後続育成に手が回らない
c.年齢・素性様々な人が入社するので、階段を高く設計できない
d.経営者の意向(権限の独占)で社員の成長を望まない
の4種別がありましたね。繰り返しになりますがdに該当する企業に対しては人事施策を示唆するつもりはありません。

 その逆で、社員の成長を望み、しかもbのように事業ノウハウもあるのに、育成が弱点となっている企業に対しては、キャリアの階段作り(次回説明します)を示唆して、TypeAもしくはTypeBへの移行を支援します。

 残ったaとcの企業ですが、私はこうした企業は、そのままの形である一定数日本に存在し続けてほしいと思っています。敷居が低くて、どこから誰でも入れる企業。年収はそれほど高くなく、キャリアの発展性も少ないかもしれません。ただ、こうした企業が、就職氷河期世代の未就業者や、大手をリストラされたミドル層、もしくは高齢者や女性など「弱者」の受け皿となってきました。日本型の問題を救ってきた存在です。街と山野の端境の里山が人心を癒すのと同様に、社会にはこの手の企業が必要となります。彼らの経営を支えるために、行政は一役買うべきだと思っています。それも、「一皮むかず」そのままの姿で。

 例えば農業は、単に国民への食糧供給という役割だけでなく、農地を残し農耕を行うことで国土を保全する、という一面もあります。そこで、国は生産性では国際競争力に乏しいこの産業を保護しています。同様な意義を、日本の中小企業保護にも見いだすべきでしょう。

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海老原さんのインタビュー記事が日経ビジネス電子版に掲載されました