全員一律の底上げは得意だが、リーダー育成が苦手と言われる日本企業。30年以上前から問題意識はあったが、一向に改善しない。それというのも「未来を予測して必要な人材像を明らかにする」というそもそも無理な作業に力を注ぎすぎるからだ。

(写真:123RF)

 人材育成の後半は、「トップエクステンション」となります。これは、リーダー候補の人材を見つけて、しっかり育てることを指しますね。日本企業はよく「全社員一律管理での底上げ教育は上手だけれど、リーダー育成は欧米にはかなわない」と言われます。

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日本企業の得意な部分、へたくそな部分

 連載初回で取り上げた、90年代の論議をもう一度見てみましょう。

「現代は先が読めない、混迷の時代なんですね。いままでのビジネス・リーダーというのは、過去のトレンドをベースにして、将来予測の引き出しがうまい人が成功してきたわけです。(中略)この混迷の時代にビジネスを自ら切り開いていくには、過去のトレンドだけでは難しいと思いますね。こういう時代にはトップ自らがビジョンを示して引っ張っていく強力なリーダーシップが必要であって、経営もトップ・ダウンがベースになるだろうと思います。従来の“おみこし経営”や猿山のボス的なリーダーでは駄目なんですね」(三井物産/人事部能力開発室長)

「過去の成長性が高かった時代には、放っておいても日が当たって、外の風に吹かれて、自然に人材が育ったんです。でも、もはやそういうことはあり得ない。これからはリーダー候補を見つけてきてリーダーを育成する人事システムが必要になってくるのではないでしょうか。従来の育成体系の中のリーダー育成とは別に、ビジネス・リーダーを育成する人事システムを別建てでつくる必要がある」(ソニー人事課長)

「早い段階でいかにビジネス・リーダーの資質のある人を発掘していくか、ここがポイントになる」(本田技研工業/人事部主査)

「まったく同感です。私はその時期は30代前半かなと思っているんです」(ソニー人事課長)(『人材教育』1995 年5月号より)

 どうです? 欧米的な早期選抜への憧憬が空回りする状況は、寸分、今日と変わらないのが見て取れるでしょう。

 こうした30年ひと昔の状況がありありと分かるのが、経産省が2017年3月に発表した「戦略的人材育成ガイド」です。ここにはバブル崩壊直後に直輸入された欧米流リーダーシップ開発(LDP)が時をワープしてそのまま載せられています。骨子を簡単にまとめると以下のようになります。

1. 経営人材の明確化→今後の事業を考え、必要なリーダー像を決める
2. 人材プールと育成計画→候補人材をプールし、育成委員会で育成計画を立て、育てる
3. 成長促進ⅰ)→実務上での成長ソリューション
4. 成長促進ⅱ)→実務を離れた成長ソリューション

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 なぜ、これだけのことが30年間、具体的な人事施策として実装できなかったのでしょう? そこを考えないと、またこの先30年も同じことになってしまうことに気づいてください。

 順を追って説明していきます。以下、図中のノンブルと照合しながら、見ていってください。