先週最終回を迎えた大人気連載「人事の組み立て」。今回と次回は番外編と称して、2021年4月27日配信のオンラインイベント「CHO Summit2021Spring」での海老原さんとその師匠、中央大学ビジネススクール教授佐藤博樹氏による対談の模様をお届けする。佐藤教授は2000年代の初めから日本でのジョブ型導入に注目してきたが、その狙いは昨今の「ジョブ型祭り」とはかけ離れたところにあった(司会、構成は小林暢子=Human Capital Online発行人)
――このセッションでは「間違いだらけのジョブ型雇用を切ると題しまして、中央大学ビジネススクールの佐藤先生と雇用ジャーナリストの海老原さんによる対談をお届けいたします。よろしくお願いいたします。海老原さんは佐藤先生に師事されてもう20年になるそうですね。
海老原:1997年ごろ、私がリクルートのワークス研究所に兼務発令された時に指導役として佐藤さんがいらっしゃってくださってからだから、24年になりますね。その後も、経産省、厚労省、経済産業研究所、人材活力研究所など四カ所でずっと面倒見ていただき、2020年からは中央大学の大学院に引っ張っていただいています。本当に親代わりって感じですね。
佐藤:今ご紹介いただきました中央大学ビジネススクールの佐藤博樹です。大学では人的資源管理を教えています。海老原さんとの関係では僕の方が学ぶことが多かったと思います。今日は皆さんと一緒に僕も学びたいなと思いますのでよろしくお願いいたします。
海老原:佐藤さんはね、研究者としてものすごい方ですけど、ビジネスセンスもあるんですよ。だいたい時代よりも一歩先で、マスコミや世の中がその後ついてくる。先にネタを掘り起こしているパターンですよね。
僕は今回ジョブ型について、佐藤さんとぜひ対談したかったのです。なぜかというと、ジョブ型雇用は労働政策研究・研修機構労働政策研究所長(JILPT)の濱口(桂一郎)先生が2006~2007年ごろに言い出したのですが、それに先立って2005年位から佐藤先生が「限定正社員」について言及していらっしゃったんですね。いわゆる職務と地域を限定して正社員で雇うという仕組みで、これがヨーロッパの限定型雇用、つまりジョブ型に非常に近かったのです。2009年に出版した私の本(『雇用の常識、本当に見えるウソ』、プレジデント社)で、「職務や地域を限定して無期雇用する限定型正社員を日本に持ち込めないか」と書いているのですが、それは佐藤さんの提言からもってきていているのです。非常に早いときから目をつけてらっしゃったわけで。