オンラインイベント「CHO Summit2021Spring」での対談後半。「新卒一括採用」「職能資格制度」など、日本型人事を象徴する諸制度は本当に時代遅れなのか。海老原さんと、恩師である中央大学ビジネススクールの佐藤博樹教授が激論(司会、構成は小林暢子=Human Capital Online発行人)。

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――ここからは少し趣向を変えて、今、日本にある、あるいはこれから日本の企業が導入しようとしている様々な人事の仕組みについて「あり」か「なし」かを、お二人に判定していただきます。お手元の「〇」「×」「△」の札でズバリお答えください。

 最初のお題は「新卒一括採用」です。

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写真右●佐藤 博樹(さとう ひろき)氏 中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。雇用職業総合研究所(現、労働政策研究・研修機構)研究員、法政大学経営学部教授、東京大学社会科学研究所教授などを経て2014年10月より現職。東京大学名誉教授。専門は人事管理論 写真左●海老原 嗣生(えびはら つぐお)氏 雇用ジャーナリスト、ニッチモ代表取締役、厚生労働省労働政策審議会人材開発分科会委員、大正大学特命教授、中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。1964年東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートキャリア)入社。リクルートワークス研究所にて雑誌「Works」編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。本連載をまとめた『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』(日経BP)など著書多数。

――お二人とも〇ですね。

海老原:僕はこれ、必要悪じゃないかと思ってるんですよ。他にいい方法が見つかってないんですよね。

 欧州では学生が職業訓練を受けた後に企業入りますが、これがうまくいっているのはドイツだけでフランスはそうでもないんです。といってもドイツの職業訓練も結局は新卒一括採用にひも付いています。大企業で職業訓練を受けた人の8割、中小でも6割がそこに入る。だから結局新卒採用と同じなのです。

 インターンシップという選択肢もあるわけですが、例えばフランスのような職業資格型雇用が浸透した国では、そもそも入社前に仕事ができるようになっていなくてはいけないので、そのために大学在学中に平均14カ月インターンシップに行っているのです。それもフルタイムで。それだけインターンシップをやりながら大学も行くのは大変過ぎるので、結局インターンシップも職業訓練もやらない学生が多い。その結果フランスでは若年失業率25%という事態になってしまうわけです。こうした状況を踏まえると、新卒一括採用はまあ、必要悪として、直すところはあるけど仕方ないんじゃないかなと思っています。

佐藤:私も新卒一括採用はありだと思いますね。大企業のホワイトカラーの大半は職種を限定されていないし、勤務地限定の社員も一部いますが、その場合もブロック内での異動は会社に人事権がある。訓練可能性を考えると、やはり新卒で採用して入社後に育てていくっていう方が合理的だろうと思います。

 いわゆる即戦力採用に移っていくと、今海老原さんが言ったように大学生も在学中に長期のインターンシップをやったり、卒業後も正規採用ではない形でトレーニングプログラムを受けたりします。その場合には例えば3カ月ごとにいろんな仕事を経験しますが、企業が採用してもいいと考えるくらいになるまでの経験を積む時期は、人によってバラバラです。企業は一番下のポストに空きができると、キャリアの短い経験者の採用や、インターンや訓練中の人などを採用していくことになります。そのように雇用システムの入り口から変えるなら別ですが、そこまでやらないのであれば、やはり新卒一括採用が企業にとっても学生にとってもいいように思いますね。

卒業後3年は「適職探し」、第二新卒転職を盛んに

海老原:今は新卒一括採用で入って、営業でダメだったら社内で営業から経理に回すというような形でレスキューしているじゃないですか。そうじゃなくて第二新卒として他の会社に移れる、第二新卒転職もうちょっと盛んにできるような社会が良くないですか。

佐藤:基本的に日本では、大学生が在学中に長期のインターンシップをやっていないので、入社までに分かることは基本的な労働条件くらいですよね。やりたい仕事も分からないのでとりあえず入ってから、「営業はしたくないと思っていたけど、営業やったら良かった」なんて思う人もいるわけですよね。もしくはその会社の職場風土が向かなくて、海老原さんが言うように他社に転職しようと思うこともあるでしょう。

 実は働いてみなきゃ分からないことがすごくあるわけですよ。いい会社だなと思った会社が本当にいいのか、この仕事が自分に向くのかなどは働いてみなきゃ分からない。卒業して勤めて3年ぐらいの間に適職を見つけるということが大事なのです。最初の会社で見つからなかったら転職すればいいと思います。大学を出た新卒は、今だいたい入社3年までに35%ぐらいが転職すると言われているけど、僕その数字は低いと思っています。だって仕事経験なくて会社に入って、それから仕事を経験するわけでしょ。3割で済んでいるというのはむしろいい方なのではないかと思うんですよ。

海老原:5割ぐらいでもいいかと。

佐藤:そうそう。だから卒業後3年間は適職探しの時期。最初の辞めた人が次の会社に移れているということは、企業も第二新卒を採用しているわけですよね。そういうふうに考えると、「日本企業は新卒一括採用だから、卒業後の最初の入社で職業生涯が決まる」みたいに言われがちですが、実はそうじゃないわけです。働いてみないと適職など分からないことがたくさんあると割り切れば、就職活動も楽になるはずです。

――とりあえず1回就職しようと。

佐藤:卒業して3年間はずっと適職探しなどの活動が続くと思えば、学生も「この1年の就職活動で自分の職業生涯が決まる」みたいに追い詰められることもない。

海老原:景気の変動も吸収できますね。

――実は私も前の会社を3年1カ月で辞めたんです。

海老原:私も1年で辞めましたよ。

佐藤:僕は大学院をでて最初に勤務した研究所を2年と3カ月で辞めました。2年で辞めようと思ったらボーナスをもらって辞めろと言われて。

海老原:それはいい会社じゃないですか。ボーナス出る前に辞めさせようとする会社もあるし。