エリートを鍛える場がなければエリート採用は無意味

――次は「エリートコース採用」です。初年度の報酬が1000万円なんていう例も出てきていますね。

佐藤:新卒でエリートっていうのは、将来経営トップになるコースで採用ってことでしょうか。

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海老原:欧米のエリート採用をちゃんと研究してほしいのです。もう例えば米企業のリーダーシッププログラム採用は、フォーチュン500に入っている企業でも、学部卒で10人位しか採らないんですよね。GPA(Grade Point Average)で言えば3.9とか4.0っていう数字で、とにかく大学の一番とかの人たちばかり集めているわけです。

 そういう人たちを2年間、8プロジェクトぐらい経験させるんです。3カ月に1つずつプロジェクトに入り、8つぐらいのプロジェクトを回した結果を評定して、半分だけ採用するんです。その代わり、入った瞬間に既にアシスタントマネージャー、すぐマネージャーになるんです。日本の会社が初任給で1000万払とか言うけれど、そういう仕組みがちゃんとできているのかと。早稲田とか東大出た人たちがエリートとノンエリートに分かれると、日本だと「なんで同じ大学なのに待遇違うの?」っていう攻めぎ合いになりますよ。それは僕ちょっと納得いかないな。

佐藤:海老原さんが言われた通りで、海外では初めから経営トップにつながるようなコースを設けて採用している会社はあります。

 ただしそれは、そういうコースに乗れる人の中の一部で、実は通常のルートから採用された人が上がっていくケースが多くなります。全体で見ると幹部層のうちエリート採用の人は一部です。当然ですが、エリート採用だと必ず昇進するわけではなくて、当然途中でセレクションがあります。日本と違うのは、そういうふうに入ってくる人には在学中から仕事を経験した人が多いということです。先ほどの話のように、大学出て、1年とか1年半の長期のトレーニングプログラムを経験しています。一方日本の新卒は働いた経験がそもそもないです。エリート大学を出て成績が良くても、その人の本当の能力は分からないわけです。

 エリート採用とは違うのかもしれませんが、日本の企業でも例えばAI関係のエンジニアなどは普通の新卒より高めの初任給で採用しています。私は、これはありだと思います。理系人材だと、理工学部は授業料が高いうえに大学院に行くなど自分自身に投資してわけで、初任給など理系と文系が一緒ではおかしいと議論ありますね。

 日本では採用時の能力に関する情報の非対称性が大きいと思います。学生が持っている経験や能力を十分に見る時間がない中で、「あなたはエリートのコースですよ」と決められるのか。