職群別に昇級基準を設け「閉じた」仕組みに

――次のお題は「職種別育成」。職種をある程度固定して、そこの専門性を高めていくような育成プログラムを組んでいくということですね。

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佐藤:まず日本の現状では、採用するときに職種を限定しない。例えば製造業ではあれば文系は最初全部営業に入れて、しばらく経つと経理に行く人、人事に行く人が出てくる。そうやって入社して7~8年経つと“畑”が決まるわけです。営業畑とか人事/経理畑だとか。その後は基本的にはその“畑”の中で仕事を経験していくわけです。ゼネラリストと言うとき、「人事も経理も営業も経験している人」などを想定しますが、そんな人は通常いません。日本では実は既に職種別あるいは職能分野別で人を育てているのです。

 職能別であり職務別ではなく、例えば「原価管理」といった狭い職域で育成するわけではないのです。経理部門の部長や課長などは、例えば原価管理から始めて決算や資金調達をやって、上に上がっていく。経理も営業も人事も、という育て方をしているわけではないのです。「ゼネラリストはよくない。専門性が大事」と言うような人はそうした実態を知らない人なのです。

 ただこうした職能別の育成をどれくらい意識的に行っているかは会社によって異なります。今後は、例えば30代になるときに「私は経理職能でキャリアを積んでいきます。経理職能以外には異動させないでください」と決めるのも一つの方法でしょう。就業規則上でも、経理人材や営業人材にキャリアを分け、その中で人材育成していく方法もあるでしょう。ただ職務別では細かすぎと考えています。

海老原:私も、職種じゃなくて職群別育成だと思います。これは少し見直して来ています。

 最近では見ると、コンサルティング会社のマーサーが提唱している「職群別に職能等級を設ける」という仕組みがいいなと思いました。全社一律型から個別型に能力等級を完全分離するので、同じ等級でも職群によって要素がかなり異なります。今までの職能等級制度は全社一律だから、どこでも異動できるように汎用能力でしか要件を設定していませんでした。職群別能力だと、例えば経理職群だと1ランク上がるのに簿記2級取らなきゃいけないとか、同じ等級でもシステム職群だと情報処理2級を通らなきゃいけないとかという形になっているんです。

 こうなると経理で簿記2級取って等級が上がった人は、システムで同じ等級には行けません。横スライドできないのです。つまりこれは職群の中で人事が固定されることになると思うんです。そういう意味ではちゃんと閉じた仕組みで人事権を制約できるわけです。その代わりうまく育たなかった人を、今までみたいに経理からシステムに移すことはできなくなります。結果、「サヨナラ」というケースも生まれるでしょう。ここまで閉じた仕組みになると、だいぶ欧米に近づく感じがしますね。

佐藤:海老原さんが言われる通り、経理畑とか営業畑みたいな職能別の育成は実態としてやっているのですが、職能資格制度というものは全社一律です。本来であれば職能別の資格制度にして、異動させる場合は職能等級を評価し直すのが望ましいでしょう。例えば経理職能で職能等級が3等級の人が、営業職能に異動するときはその職能等級を見直すわけです。将来的には職能分野の職能資格制度を作るのがいいと思います。全社1本ではない。その方が育成目標もはっきりするわけです。

――では最後のお題は「職能資格給制度」。

海老原:憎いあんちきしょうですねえ。

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海老原:職能資格給制度は全社1本の汎用資格なんですよね。リーダーが任せられる人レベルが何級とか、マネジメントができるレベルが何級とか、大きな戦略が決められるレベルの人が何級とか。それ以上細かくなっていないから、どこでもいけるんですよね。

 こういう制度が本当にいいのかと思ってはいますが、若いときにちょっとずつちょっとずつ階段上げる、もしくはその部署でダメだった場合、ほかの部署に異動するうえではいい仕組みなんです。先ほど申し上げたように職能別で仕切られていると「簿記2級持ってるけど、情報処理は持ってないから…」となって行き詰まってしまうわけですが、汎用資格ならシステムに行くこともできるわけ若い時は流動性があり、職能が付いたら個別群でと、「どこかまではこれがいいけど、どこかからは変えなきゃいけない」というイメージですね。

佐藤:社内で社員をなぜ格付けるかという、序列を作らないと賃金は決められないのです。その際、保有能力で格付けするのか、担当している仕事でするのか、という大きな二つの選択肢があるわけです。日本企業の多くが社員の格付け方法として職能等級制度を選択しているかというと、一つは配置の柔軟性の確保ですね。配置の柔軟性を重視する場合は、職能資格制度を維持することになります。

 ただ現状でも社員の育成が大事な時期、入社10年ぐらいまでは職能資格等級で運用し、それ以降は仕事やポストで運用する方式に変わってきて、キャリア段階ごとに職能資格から役割給や職務等級に移行するみたいに切り替えているのが現状で、既に変わってきていると思います。