外から持って来られる“答え”はない

佐藤:もう一つは、社会や企業の動向にアンテナをはる知的好奇心や新しいことに取り組もうとするチャレンジ力、さらに新しいことを学ぼうとする学習意欲などを持ち続けられるかどうかが大事です。企業や管理職としては、社員の学習習慣を評価することが必要です。あるいは仕事以外のいろんなことに社員がチャレンジしていることを評価することがすごく大事だと思います。

――そういう知的好奇心があって意欲のある人が中央大学ビジネススクールに行くのですね。

佐藤:ぜひビジネススクールに来ていただいて海老原さんの授業を受けてほしいですね。

海老原:僕はそんな前向きになれないんですよね。もう今でもへとへとで(笑)。65歳まで職に就いて、年金もらったらリタイア、いやお払い箱か、と。

佐藤:うちのビジネススクールの学生は、実務で身に付けたスキルはあるけど、それだけで将来の変化に対応できるか不安があって、これまで経験で身につけたスキルを理論的に整理し、汎用可能性や応用力を高めたいという人が多いですね。もちろんネットワーク作りにも役立ちますが。

海老原:ここまで実務家を集めたビジネススクールってあります?

佐藤:他の分野は分かりませんが、人的資源分野でやれば海老原先生にも来ていただいておりますので、いいじゃないでしょうか?

――ではそろそろ時間となってきましたので最後に締めのコメントをいただければと思います。これからの日本の人事あるいは雇用に対して、ちょっと一言言っておきたい、という締めのお言葉がありましたら。

海老原:僕はね、都合のいい解釈するのを労使ともやめましょうと言いたいですね。今日は使用側にはずいぶん厳しいこと言ったので、労働側の話もしていきたいですが、ジョブ型で残業がなくなって転勤もなくなって給与も上がって早く帰れてワークライフバランス充実なんて、そんな世界はどこにもないわけなんですよ。

 欧米のエリートだって死ぬほど働いてて、日本の無限定とそんなに変わらない。ただあまりにも日本の企業は、運動会やれとか、みんなですぐ会議だとか、少々やり過ぎていた。そこを正せば、いいと思っています。

佐藤:ジョブ型雇用への転換の必要性を主張している大企業を見ると、その背景として現在の雇用処遇制度に課題があることは理解できます。現行の雇用処遇制に解決が求められている課題があることは事実ですが、その解決策として「ジョブ型」というラベルを貼って変えていくってことには反対です。課題が何でその解決策は何なのかを、まず具体的に社員に分かるように説明する必要があると思います。

 それともう一つ、課題の解決策は、海外の企業や国内の他企業にあるわけではないのです。自分たちで考えなきゃダメなのです。自社の人事制度の課題を把握し、それをどう解決するかを考えることです。外から持ってきてこれが答えだっていうのは、人事制度には当てはまらないのです。

 人事制度について言うと、「どの会社でも当てはまる万能のベストプラクティスの仕組みがあるわけではなく、それぞれの会社ごとにベストの仕組みがあるので、それを自分たちで考えないとだめだ」と言っているわけです。そこをあまり考えずに、中身がよく分からない「ジョブ型」にすれば全て解決するというのは問題じゃないかなとは思います。

――長時間のお話ありがとうございました。視聴者の皆様もお疲れさまでした。くどいようですが海老原さんの新著ではこういうお話を分かりやすくまとめていますので、是非ご一読ください。