ジョブ型雇用の問題を分析し、欧米の人事制度に飛び付くことを繰り返す日本企業を鋭く批判した本連載。雇用ジャーナリストとして人事業界に精通した著者が、なぜこのタイミングでこのテーマを取り上げたのかを明らかにする。

(写真:123RF)

 2020年10月に始めたこの連載を4月に書籍化した。おかげさまで多くの読者を得て版を重ねている。今回は、私がこの連載記事を書いた理由を書いてみたい。

 「『ジョブ型雇用』とは、従業員に対してジョブ・ディスクリプション(職務記述書)により職務内容を明確に定義し、労働時間でなく成果で評価する雇用システムだ」。 2020年9月、大手の人材系研究所が、『「日本的ジョブ型雇用」転換への道』と題したプロジェクトの立ち上げに当たってこんなメッセージを発信した。

 ちょうど、本連載を始めようか始めまいか迷っていた時期に、名の知れた研究所からこんな典型的な誤り文句が、発せられる。こりゃ、連載を迷っている場合じゃないな、本気でやらなきゃならん。そんな気持ちが連載執筆の根本にある。

 尊敬する濱口桂一郎氏(JILPT所長)はご自身のブログで、その勝手都合の良いジョブ型解釈に対して再三警鐘を鳴らしている。この連載を読んだ人たちは、上記の短い惹句にさえもう、意味不明な言葉が満載となっていることに気づくだろう。

 私は早速、自身のフェイスブックにて、大人気お笑いコンビ「ミルクボーイ」のネタをパロって、以下のような誤りへの指摘をアップした。

「あんな、JD(ジョブディスクリプション)いうのあってな、それ、しっかり書いたらな、脱日本できるんやて」
「欧米じゃ、JDに“頼まれたら何でもやる”て書いてあるわ」
「せやけどな、成果評価いうんがあって時間労働でなくてな」
「向こうは“ナインボックス”いうてえらい粗い評価やわ。そもそもヒラ社員、ボーナス固定で成果反映などされんし、基本給も積み上げや」
「せやからな、欧米的やなくて日本的に作りなおそう言うんやわ」
「一生やっとれ」

それ、日本的なのか? 脱日本なのか?

 結局、日本的ジョブ型といわれるものは、

・職種コースを設け
・JDを用意し
・ジョブグレード(人に付ける)を新設し
・成果評価で給与を払う

の4点セットをいうらしい。こんな方式の国はない、というと「だから日本的に作る」と開き直る。そもそも、ジョブ型とは、欧米流の働き方をいうわけであり、日本的ジョブ型とは、「日本的欧米流」という自家撞着が過ぎる言葉だということに気づいていない。そこもお笑い種ぐさだ。

 人事の手練れは、私同様、この「日本的ジョブ型」にジレンマを感じていたのだろう。ほどなく私のフェイスブックには多々、「本物のプロ」からの名言が寄せられる。

 私のマネをして、ミルクボーイ風に「日本的」の矛盾を語ってくれたのは、人材協議団体事業部長の川渕香代子氏だ。

「オカンの会社な、長く働けば給料上がったんやけど、今度変わるんやて」
「ほう。脱年功序列やな。ほなら、ジョブ型や」
「そうはいっても1年働いたら1年分は能力アップするから給料あがるかもしれへんねん」
「じゃあ、ジョブ型やないな」
「あとな、これからは中途採用に力いれるらしいねん」
「なら、ジョブ型やな」
「でもやっぱ若い子ほしいから新卒は続けるらしいねん」
「それはジョブ型やないな」
「説明会では入社時の仕事そのまま続けさすいうねん」
「ほな、ジョブ型か」
「でもな、人事評価で給料下げたり他の仕事さすこともあるらしいねん」
「それはジョブ型やないな」

 お見事と言うしかない。

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