欧米企業の人事制度に精通した識者との鼎談編。第2回は人事評価の話から。「日本の査定は主観的、欧米はデジタルで白黒はっきり」というイメージが持たれがちだが、実態は“真逆”。そして話題は育成、サクセッションプランにも広がる(構成=小林暢子、写真=稲垣純也)。

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海老原嗣生氏(以下、海老原):次にお聞きしたいのが人事評価です。外資系の査定はどれぐらい厳格なものなんですか。日本みたいに主観的じゃなくて、すごくデジタルというイメージがあるのですが。

中島豊氏(以下、中島):査定の目的によって違ってきます。「うちの会社は査定に何の重きを置くのか」を決めておかないと、何をどう査定すべきか分からなくなる。

人事評価は育成のため、曖昧だから対話が生まれる

中島:海外の人材マネジメントでは「査定は育成のため」という考え方が、現在のトレンドになっています。ところが日本ではバブル崩壊から成果主義に傾き、「査定は限られた昇給原資もしくは賞与原資の分配のために行う」という意識が強い。分配が目的であれば、制度はものすごく精緻に作らなくてはなりません。

 一方、育成目的だと精緻に制度を作る必要は全くなく、むしろ曖昧に作る。曖昧だからこそ上司と部下の対話が生まれて、対話のなかで育成していく。今海外で、日本のように精緻な査定をやっているところはないんじゃないでしょうか。

 その延長線で少し前に、ノーレイティング(ランク付けしない評価制度)にしようという流れが出てきたんじゃないでしょうか。ノーレイティングは育成が目的で、一番大事なのは上司と部下が育成のゴールとその達成評価について「握れて」いること。そのために対話することが大事で、そんなキチキチにどうのこうのしてもしょうがない。

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中島豊(なかしま ゆたか)氏 特定非営利活動法人日本人材マネジメント協会会長 1984年富士通入社、1994年からリーバイ・ストラウスジャパン、日本ゼネラルモーターズ、日興シティグループ証券などで人事を担当。2011年ジブラルタ生命保険執行役員、2019年より日本板硝子執行役グループファンクション部門人事部統括部長

中野宗彦氏(以下、中野):日本の会社で言えばリクルートもそんな感じですね。

海老原:上位職のエリートだけじゃなくて、一般社員も育成目的で査定をするのですか。

中島:そもそも組合員を中心にした工場のブルーカラーには「査定」と言う概念がありません。20世紀初頭の大量生産方式の工場で人材の調達を購買部門がしていたように、現業においては、人材を工数として見る伝統があるからです。査定をするのは、育てていこうとする意志表示なのです。

海老原:僕の知人は34歳で外資系金融企業を辞めたのですが、その後釜として中途採用された人は50代だったそうです。日本は成長や育成を考えるから、その層の中途採用は30代、せいぜい40代まででしょう。50代を採用したのは育成する意思がなく、「その仕事さえできればいい」と割り切っているのだと思っていたのですが。

中島:社長に育成する人と、今の業務で効率を上げてもらいたい人とは、育成のレベルが違います。