企業と大学の膠着状態を突破口を

海老原:最初の話に戻りますが、そもそも日本型雇用の問題は、ヒラでいても年齢とともに給料が上がりすぎることにあったのに、「ジョブ型ならもっと儲かる」という話になっているのはおかしいですよね。

中野:「ジョブ型でみんながハッピー」ということはないです。ハッピーになる人もいますし、そうではない人も確実にいます。

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中野 宗彦(なかの もとひこ)氏 ノイエ・ジール代表取締役社長 リクルートで総合企画部マネジャー、神戸支社長を歴任し、大手から中堅、ベンチャーまで日系・外資系企業を幅広く担当。その後、リクルートエグゼクティブエージェントで経営層のエグゼクティブサーチを経て、日系上場メーカーの人事制度企画に従事。現在は人事制度・採用コンサルティング会社を起業(現職)

海老原:ジョブ型の導入に当たって「職責を即座に報酬に反映し、より大きな職責へのチャレンジができるようになる」と言う企業もありますが、チャレンジするようなポジションがないからみんな課長になれなくなっている実態がすでにあるわけじゃないですか。

中島:これ組合に対する説明ですね。

海老原:あとは新卒採用のため。

中野:「AIエンジニアなら1000万円払う」みたいな。

海老原:やりがい搾取って言われているんですよね

中島:「大きな仕事」なんてなかなかないです。それは会社が用意するんじゃなくて個人が見つけていかなきゃいけない。

海老原:ティール型組織ですよね。リクルートは「それは自分で見つけなさい」というスタンスでずっときています。

中島:それが正しい姿。だから成功するのです。

中野:「そのためにジョブ型を入れるべき」と言われたら分かるんですが。

海老原:さっきの話は分かりやすかったですね。エンジニアはヒラで滞留してても900万もらっていい。営業は同じものを同じ金額しか売っていないのに、給与が上がるのはおかしいと。やっぱり職務別にちゃんと分けなきゃいけないという話ですね。

中野:例えば、30歳と50歳の営業がいて、30歳の方がたくさん売ってるなら、その人の方が給与が高いのが当たり前ですよね。一方で先に挙げた土木技術者では65歳を超えても、大手の管理職時代と変わらない水準の給与をもらってる人がたくさんいます。

海老原:それは積み上げたからでしょ。まあ、半導体エンジニアとかコボラー(プログラミング言語のCOBOLを使うソフトウエア技術者)とか、市場価値が上がったり下がったりするエンジニアも多いんだけどね。

中野:そういうことです。積み上げの分、外部市場からなかなか採用できないので。

中島:そこはジョブ型ですよね。企業がジョブ型に変わっていくと、今度は学生がジョブというものを意識して勉強するようになり、大学教育も変わっていく。今ここが膠着状態になっています。企業としては大学の教育が実務的でないので、新卒一括採用に代表される今のやり方を続けざるを得ないと思っている。大学側は「いや、企業が求める人材が漠然としているから、専門的な教育ができないのだ」と言う。どこから動かすかといえば、我々の立場だと企業の方がまず、ジョブという考え方、マーケットという考え方を入れていくと、脱日本型とか言わなくても自然とシステムができていくのではないでしょうか。

海老原:結局教育って社会体験の中できるわけじゃないですか。社会体験を考えなきゃいけないんだから、企業側から発するってのは非常に理論的に分かりやすいです。企業が変わればみんな変わるんだよね。就職したいから。

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海老原嗣生氏