「今日より良い明日」ではなく「明日も今日と同じ」

中島:ちなみに日本型っていう何をもって言うのでしょうか。

中野:「日本型ジョブ型」が一番わけの分からない言葉ですよね。

中島:なぜ日本型にしなきゃいけないのか。

海老原:そもそも日本におけるジョブ型の定義が何か間違ってるからじゃないでしょうか。「そんなの欧米ではやってないよ」って言われたときのために、「いや、日本型ジョブ型なんだよ」って言えるようにしているのでは。例えばジョブディスクリプション(職務定義書、JD)も、欧米では厳密に定義していたのは1970年代ごろですが、今日本はその頃のやり方を踏襲しようとしています。

中島:ちなみに米国では1980~1990年代はJDを曖昧にすると同時にグレードをどんどん少なくして、ブロードバンドにしたわけです。それまで大きな会社だと100ぐらいあったグレードを、10前後まで減らしています。

海老原:森口千晶さんの本を読んでいると、米国でも昔は年功的な要素もあり、終身雇用だったとありますね。

中島:階段を上ることがモチベーションを上げると言われていました。

海老原:それが公民権運動で差別だって言われ出したんですよね。上に上がった人がWASPしかいなくて、高齢者を優遇しているといって。

中島:ゼネラルモーターズ(GM)の上司に聞いた話ですが、評価をやめることを検討した時期もあったそうです。評価の統計を取ると、人種による偏りがあることが明らかになってしまうからです。

中野:欧米は人種や国籍で差別が生じないよう、絶対平等にしなければいけないことと、「この仕事には修士以上の学位がないと就けない」など意図的に差をつけることを明確にしていますよね。日本は「みんな平等だよ、一括採用、初任給一緒。職能で営業部長も経理部長も給与一緒」と言いながら、キャリアの途中ではしごを外しまくるわけじゃないですか。平等と言いながら、「全員上に行けよ」と日々の仕事で強制し、それしかニンジンがない。「(上に行くのではなく)今の仕事でもっと頑張ろう」とか「楽しみを見出そう」という感じにならないのが、暗いというかずるいなと感じます。

中島:日本はまだ高度成長時代を引きずってて、「今日より明日を良くする」という考え方がずっとあるのでしょうね。でもそれでは企業は回らないので、裏で切り落とす。欧州の人たちは「明日も今日と同じ」だと思っている。その中で、違う明日を作っていこうという人は全体の20%に過ぎません。

海老原:中島さんの話で面白いのは、上がる人が上がり、下がる人は下がるという手順がちゃんとプロトコル化されてることですね。大学院でてMBAを取れば上がれるんだよ、と。

中島:その前提には、欧米には社会のヒエラルキーがあって、何もしなかったらずっとそこ。それを飛び越えて上に行こうという意欲を支えるような制度がある。

海老原:ただそれは一部でいいんだと。日本みたいに全員にチャレンジ意欲を持たせるわけじゃないですね。今日はいろいろ勉強になりました。またやりましょう。

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