異なる等級の社員が同じ役職に就き、賃金も違う――。職務主義中心の欧米人からはカオスのように見える日本の職能主義には、メリットも少なくない。だがポストに定員がないために恣意的な運用を可能にし、「職務主義もどきの職能主義」をはびこらせてきた。

(写真:123RF)

 まず前回の復習をしておきましょう。

職務主義では、①ポストに応じて処遇が決まる。②ポストには定員がある。
職能主義では、①ポストではなく個人の等級で給与が決まる。②等級には定員がない。

 この根源的な違いは、欧米の人たちが、どうしても日本社会を理解できない大きな要因ともなっています。

 例えば欧米の人からは、「年齢差別がある(年功給だ)」「非正規雇用者の給与が不当に安い(確かに安いのですが)」と見られます。特に後者については欧米から非常に厳しい視線を向けられ、経済協力開発機構(OECD)や国際労働機関(ILO)などの国際機関までもが、日本を名指しで批判したり、改善要望を出したりしているのです。

「同一ポスト同一賃金」という欧米の常識

 どうしてここまで、日本に問題があると考えてしまうのでしょうか。これにも「職務主義の常識」と「職能主義の常識」が影響を及ぼしているのです。

 日本の人事制度では、ポスト的に「ヒラ」なのに、そこにいろいろな等級の人が混在することになります。例えばこんな感じに。

・入社したての新人(1級)
・だいぶ熟練した中堅(2級)
・課長手前の準ベテラン(3級)
・等級的には管理職だが部下のいない専門社員(4級)
・契約社員(0級)

 彼らが皆、横浜支社営業1課に所属して、営業活動に励んでいたとします。そうすると、同一ポストに5種類の給与レンジが入り混じることになります。「ポスト=職務=賃金」という欧米人の常識からしたら、大混乱でしょう。

 彼らの目にはこんな風に映るに違いありません。

 「同じ仕事なのに、年輩社員は異常に給与が高くて、契約社員はとても低い。これは差別だ」

 それに対して、日本人は同一ポスト≠同一賃金に全く違和感を持ちません。私たちはこう受け止めるからですね。

 「同じポストだけど、やっている仕事は違うのだろう」と。

 部下なし管理職社員は「課長のサポート」、準ベテランは「クレーム対応」、中堅は「新人育成」などの役割を持ち、それに付随する仕事を担当しているわけです。一方、契約社員には「難しいクライアントは担当させない」、新人には「雑用などをやらせて仕事を覚えさせる」といった形で、難易度の低い職務を与えているでしょう。つまり同一ポストなのに、職務は人により千差万別ということになります。

 欧米はこうしたカオスな状態にはせず、職務ごとにポストを以下のように分けるはずです。

・新人と契約社員は「アソシエイト」として「易しい顧客と雑用を担当」
・中堅社員は「サブリーダー」として「通常業務に新人教育を付加」
・準ベテランは「リーダー」として「通常業務にクレーム処理などの厄介な業務を付加」
・部下なし管理職社員は「アシスタントマネジャー」として「通常業務に課長サポートを付加」

 これなら、外から見てもわかり易いでしょう。職務主義における等級は職務(ポスト)に付き、個人に付される「能力等級」はありません。外から見ると、職務がポストごとに決まっているので分かりやすいでしょう。

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