ポスト数を定めず、いくらでも昇級させてしまう日本の職能主義では、総人件費の上昇を止められない。そのため多くの企業は4つの調整弁を設けてきた。その欠点を補うため成果主義が導入されたが、その本質を正しく理解できているだろうか。

(写真:123RF)

 前回は、日本企業が取り入れようとしたのは上辺だけの欧米型で、「ポストには定員がある」「まず末端までポスト数が決まり、それは恣意的に増減できない」という最も本質的は2つの特徴は無視されてきたことを説明しました。

 日本企業の人事の基本はあくまでも、ポストではなく人です。新人が育って能力基準に達すれば、皆が次の等級に上がってしまう。その結果、成長がストップした企業が人材採用を止めたとしても、内部で昇級が起こるために、人件費はアップし続けます。しかもポストベースでの雇用契約ではないため、不況でポストが減った場合でも、簡単に整理解雇ができないという問題も付いて回ります。

日本型に不可欠な総人件費の調整弁

 欧米であれば、人事の基本はポストであり、そのポスト数は、不況になれば末端まで全て機械的に減らされます。そして、ポスト数の縮小に応じて、整理解雇が起きる。仮に解雇反対の訴訟が起きたとしても、ポストベースで人事を行ってきた継続性や合理性から考えて、不正や不道徳が無い限り、企業が負けることはないでしょう(何度も書きますが、欧州の場合はその後の手続きには一苦労します)。

 ところが、人事の機軸を人に置き、ポスト数などを恣意的に決めている日本の場合、不況で組織が縮小したとしても、「ポストが減ったから解雇する」という話は筋が通らないのです。「ポストなんて恣意的にどうにでもなるように作ってきたでしょう」と判断されてしまうのですから。つまり日本型は、「人件費は上がりっぱなし」「解雇調整もできない」という決定的な弱点を有するのです。

 日本企業はこの弱点を補うために、4つの慣行を作り上げました。

 一つが、「新卒一括採用と定年制」ですね。人事の皆さんなら説明はもう不要でしょう。そう、定年により年配者(=高給者)が年間数%辞めていきます。不況時に新卒採用を止めれば、必然かなりの額の人件費が削減できる。これが第一のツールです。

 続いて分かりやすいのが、非正規雇用です。雇用先進国では、非正規雇用(=有期雇用)は原則として認めない立場を取り、例外的に許される場合も、「入口規制」と「出口規制」を設けています。入口規制とは雇用開始をする場合のルールで、「時限的な事業(イベントなど)や代替人材(産休など)」など限定的な理由しか認めないというもの。出口規制は「ある一定期間雇用が続いた場合、無期転換しなければならない」というものです。

 日本の場合2013年までは「無法状態」で、非正規労働者を雇用し放題でした。同年に労働契約法で「5年継続雇用した人は無期転換する」という出口規制がようやくできたばかりです。将来的には入口規制も策定されるでしょうし、出口規制はさらに厳しくなるはずです。つまり非正規雇用は、今後どんどん人件費の調整弁として使いづらくなっていくでしょう。

 さて、あとの二つはお分かりですか?

Q3.日本企業が好不況に応じて人件費をコントロールするための慣行として、該当するものをチェックして下さい。

□協調型労使関係 □末端社員までの賞与 □地域・職務を超えた異動
□低利益×多事業 □長時間労働 □株式持合い □広範な企業への出向