「手続きは容易なのに実際は困難」という日本の解雇の謎

 一方、欧州はどうでしょうか?

 まず、欧州も日本同様、法律にはお約束文句として「むやみな解雇の禁止」が入っています。

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 それ以上に、手続きや補償についての取り決めが非常に厳しくなされているのです。例えばスウェーデンを例にみると、解雇予告期間は以下のようにとても長くなっています。

勤続2年未満:1カ月
2年以上4年未満:2カ月
4年以上6年未満:3カ月
6年以上8年未満:4カ月
8年以上10年未満:5カ月
10年以上:6カ月(もしくはそれに相当する給与)

 そして損害賠償については以下のようになります。

勤続5年未満:給与の6カ月分
5年以上10年未満:24カ月分
10年以上:32カ月分

 このルールに従うと10年勤続者を即刻解雇した場合、38カ月分の給与(解雇予告手当6カ月+損害賠償32カ月)を支払わなければなりません。厳しいというのはこういうことをいうのでしょう。

 OECD(経済協力開発機構)が出している加盟先進国の解雇規制指数(0が容易、4が困難)で見ると、日本は「解雇手続きの不便さ」は2.0で標準的、「解雇予告期間と手当」は1.8でやや容易となっています。つまり法規的な手続きは全く厳しくない国なのです。

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 ところが、「解雇の困難性」では3.5となり、これは加盟40か国の中でも五指に入る厳しさとなっています。法律的には厳しくないのに、現実的には解雇が難しいとは一体どういうことでしょう?

 つまり、それこそがポスト無限定雇用の問題であり、「自業自得」ということなのです。

ポストを決めて動かさないから解雇もできる

 欧米の場合、ポストで採用し、そこから異動もさせないのだから、そのポストに対し職務遂行力が不足していた場合、合理的に契約を解消できる、と判断されます。

 これに対して日本の場合は、ポストを決めているわけではないのだから、たとえ着任したポストで仕事ができなくても、「社内で他にできる仕事を見つければいいじゃないか」と裁判では言われてしまうわけです。企業は好き勝手に人事権を使えるのだから、都合の悪い時だけ「ポストに合わないからクビ」などと言うな!ということ。まさに自業自得ですね。

 語弊がないように書いておきますが、欧州ではこうした能力不足による解雇は、試用期間内に行われることが多いようです。一方、米国では比較的随時、解雇が行われますが、その前にはPIP(performance improve program)という「最後のチャンス」を与え、それがクリアできない場合、解雇という手順を踏む企業が多くなっています。