日本型雇用では多様な経験を積ませて育てるので、下積みの期間が長い。対してポストありきで採用するジョブ型なら、専門性を磨き、実力が認められれば若いうちから昇進できる。「ジョブ型神話」につきまとうこんなイメージは果たして真実なのか。

(写真:123RF)

 前回までの整理です。ジョブ型とは

× ジョブディスクリプション(職務記述書、JD)でタスクを細かく規定してある
「ポスト限定」雇用であり、企業に人事権はない

 一方、日本型は「ポスト無限定」雇用であり、企業は自由自在に人事権を発動できる。その結果、上位者や熟練者が辞めた場合も、その空席をヨコヨコタテヨコと玉突きして、結局、末端の新人を1人採用すれば事足りる「魔法の」欠員補充が可能となった。ただし、トレードオフとして、解雇が難しくなる。

 ここまでの関係性を理解したうえで、さあ次の問題です。

Q1.何で日本企業は、未経験者を一人前に育成できるのでしょうか?

 日本の大手企業だと、新卒採用数が100人を超えることはざらです。メガバンクなどは好景気には1000人を超えることさえ珍しくありません。経済や経営といった、金融と親和性の高い学部にとどまらず、法学部、教育学部、文学部などからも大量に採用しています。こうした全くの門外漢を入社させて、一人前に法人融資ができる営業へと育てられるのはなぜでしょう。

 まさか、「社内教育が整っているから」なんて答えはしないでしょうね。営業はいくら研修してもうまくはならないのはお分かりでしょう。いや営業だけではありません。労務管理も採用業務も研修ではなかなかできるようになりません。難度の高い交渉やマネジメント業務などに至っては、研修ではどうにもならないのは火を見るより明らかです(欧州の職業訓練などについては後日、その真実を説明します)。

簡単なタスクを集めてやらせ、慣れたら入れ替える

 人をうまく育てる最大のコツは、一言で言うとこうです。

 「できそうな仕事を集めてやらせ、慣れてきたら少しずつ難しい仕事に入れ替えていく」

 そのメカニズムについて、説明しましょう。例えば経理に新人が配属されたとします。彼は簿記も会計もほとんど分かりません。新人の中では相対的に「数字に強くて緻密」という、いわば適性だけでこの部署に配属されました。こうした場合、まずは「債権管理」の担当になって、入金チェックなどをやることになります。これなら素人でもできますよね。

 それだけだと手が余るので、「未経験でもできる仕事」を経理の各所から寄せ集めて任されることになります。例えば財務会計からは伝票のファイリング、管理会計からは日報の入力、税務からはレシート類のPDF化などを仰せつかるでしょう。

 こうして日々、簡単な雑用をこなしていると、財務から降ってくる伝票分類の意味がわかり始め、管理会計の「日程進捗率と業績数値の関係」も、小学校の算数がわかれば次第に読めるようになる。こんな感じで、徐々に経理のアウトラインが見えてくるのです。

 そうした頃合いを見計らって、たとえば経理事務に担当変えをされ、今度は簡単な仕訳をやらされます。同時並行で簿記三級なども取得させられるでしょう。そしていっぱしに仕訳ができるようになると、次の年には支店会計を任されたりします。小さな支店の決算をさせられ、棚卸しや試算表作成などをまたここで覚える。それがこなせるようになったら、複数の支店を見るようになる。そして、そのあとは、全社決算を担当する・・・。

 こんな感じで、ちょっとずつちょっとずつ、難易度を上げていくと、知らないうちに高度な仕事ができるようになっています。これは、若者のキャリアを慮って設計したステップではなく、単に会社が無駄な給料を払いたくないから、少し手が空けばすぐに少し難しい仕事を任せるということの連続で成り立ちます。こうして日本では新人が自然と階段を上っていくのです。

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