若年層の失業率が長年の課題である欧米に対し、日本ではミドル/シニア層が「お荷物」と見なされ、リストラ時には真っ先にやり玉に上がる。雇用を巡る社会問題の違いも実は、両者の雇用システムが異なっていることに起因している。

(写真:123RF)
前回、欧米(とりわけ欧州)と日本は雇用構造が全く異なることを解説しました。それが社会問題にも大きな相違を生み出しています。さあ、早速問題です。

Q1.欧州でもミドルや非正規の雇用問題が生まれているのですか?

給与が安い熟練ミドルが若者の雇用を奪う欧米

 結局、欧米の雇用の仕組みとは、「高速スピードでキャリアの階段を上る一部のエリート」と「ストップモーションで同じ仕事を同じ年収で続ける大多数の人たち」に分化することを前回示しました。図示すると下左図のようになります。

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 一方日本では、原則として正社員である限り、誰でも緩く階段を上り続け、非正規雇用の人たちは、低賃金からなかなか救われない形になっています。日本と欧米では、このように全く異なる雇用システムを持つため、発生する雇用問題も構造を異にします。

 例えば、ひと頃日本でもよく騒がれた「若者はかわいそう」論ですが、この問題が構造上より色濃く表れるのは欧州においてです。向こうは「若者に厳しく、ミドル/シニアに優しい」社会なのですね。

 欧米であれば、多くのノンエリートのシニア層たちは、年齢を重ねても年収は大して上がりません。そのうえ、彼らは熟練者だから企業には教育研修などのコストもかかりません。しかも日本のミドルと異なり、管理職ではなく現場で実務をこなしているから、腕も鈍らないーー。つまり、会社としてはいてもらって損はしない人材です。だから欧米では一般的に、ミドル/シニアの雇用に関わる問題が起こりづらい構造になっています。

 それに対して若年層は、スキルは未熟なのに賃金は熟練者と大して変わらないので、企業は「彼らを雇うとコストの割に成果が上がらない」と忌避します。結果、若者の雇用が著しく損なわれます。これは若年者の失業率などを比較すると端的に分かります。

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 上記データでは、ドイツ周辺国、いわゆるゲルマン民族圏は日本同様、失業率が低くなっていますが、その理由は今後「教育と職業の連結」を取り上げる際に詳しく説明いたします。こうしたゲルマン諸国を除くと、なべて欧米諸国は若年失業が大きな問題だと改めて気付くでしょう。

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