丸井グループが「ウェルネス経営」を進めている――といっても病気にならないといった単なる心身の状態を指すのではない。社員による積極的な健康増進活動を通じて、組織やサービスの提供価値や存在意義を高めていこうというものだ。

 同社が掲げるキーワードは「しあわせ」。青井浩代表取締役社長・代表執行役員CEOはウェルネス経営の定義を、「自分(筆者注:社員のこと)、社会、将来世代にとって意義のある仕事にチャレンジし、成長し続けることで、すべてのステークホルダーの『しあわせ』を実現する。そのような働き方をビジネスを通じて実現すること」と述べている(同社「共創ウェルネスレポート2019」より)。

 ウェルネス経営のコントロールセンターとなっているのは、2014年に発足したウェルネス推進部(当時は健康推進部、2019年に改称)だ。具体的な取り組みの大きな柱は2つで、「ウェルネス経営推進プロジェクト」と「レジリエンスプログラム」。いずれも2016年から実施している。

 前者のウェルネス経営推進プロジェクトは、社員による自主的な活動で、各部署・各現場における健康増進活動を通じて、冒頭に述べたウェルネス経営を具体化しようという取り組みだ。

 後者のレジリエンスプログラムは、管理職や役員層に向けた1年間の研修プログラム。自分と職場の活力を上げるために必要な知識を身に付けたうえで、自ら定めたテーマに実地で取り組む。栄養学や組織マネジメントのような知識のインプットに加え、現場リーダーとして危機を乗り越えてきた体験(レジリエンス)の共有といった実践的な内容が盛り込まれていることが特徴だ。

 これら一連の取り組みを推進した結果、2018年から3年間連続で経済産業省の「健康経営銘柄」に選ばれた。さらにストレスチェックの改善度合いや平均残業時間の削減効果、離職率の改善といったデータも公表しており、健康施策の具体的な経営効果を示しているところも興味深い。

 「丸井グループのウェルネス経営では、健康の定義について、一般的なイメージである『病気にならないこと』だけに限定していない」。こう語るのは、ウェルネス推進部の小島玲子氏(執行役員ウェルネス推進部長、医学博士、産業医)だ。小島氏は2011年に専属産業医として丸井グループに入社。以来、丸井グループにおけるウェルネス経営の施策を主導してきた。

 「もちろん病気にならないことは大切。それを基盤としたうえで、社員一人ひとりの活力が高く、イキイキとし、かつしあわせになることを、現場の社員、管理職、経営トップと共に目指している」(小島氏)。

 このコラムでも過去見てきたように、産業界では「ウェルビーイング」、つまり「人がより良く在る」ことを掲げる企業が増えてきた。売上高・利益追求を至上命題とする価値観からの脱皮、あるいは、モノやサービスだけでない総合的な幸福感を求める社会の動きが背景にある。

 だが、ウェルビーイングに類する言葉が、単なるかけ声にとどまっている向きも少なくない。そうした中、定量化できる成果につなげている丸井グループは注目に値すると言って良い。その理由について、「自ら手を挙げて参加する組織風土が醸成されてきたからこそ、結果が出たと認識している」と語る小島氏。小島氏の話から、ウェルビーイングな組織を目指す企業の在り方を探っていく。

小島 玲子(こじま れいこ)氏<br> 丸井グループ 執行役員 ウェルネス推進部長 専属産業医<br> 医師、医学博士。大手メーカーの専属産業医を約10年間務める傍ら、総合病院の心療内科にて定期外来診療を担当。2006年より北里大学大学院の産業精神保健学教室に在籍し、2010年、医学博士号を取得。翌年に丸井グループ専属産業医となり、2014年、健康推進部の新設に伴って部長に就任。2019年、執行役員に就任。著書に『産業保健活動事典』(2011)、『改訂 職場面接ストラテジー』(2018)など。日本産業衛生学会指導医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)。(写真提供:丸井グループ)
小島 玲子(こじま れいこ)氏
丸井グループ 執行役員 ウェルネス推進部長 専属産業医
医師、医学博士。大手メーカーの専属産業医を約10年間務める傍ら、総合病院の心療内科にて定期外来診療を担当。2006年より北里大学大学院の産業精神保健学教室に在籍し、2010年、医学博士号を取得。翌年に丸井グループ専属産業医となり、2014年、健康推進部の新設に伴って部長に就任。2019年、執行役員に就任。著書に『産業保健活動事典』(2011)、『改訂 職場面接ストラテジー』(2018)など。日本産業衛生学会指導医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)。(写真提供:丸井グループ)

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