中期経営計画で「社員活力の最大化」を柱に

――花王グループは2020年12月に中期経営計画の「K25」を発表しました。その方針(目的)の一つに「社員活力の最大化」を掲げ、そのツールとしてOKRを活用するとしています。K25でなぜ、社員活力の最大化を掲げたのでしょうか。

仲本直史氏(以下、仲本):どの企業組織も同じと思いますが、従来より花王は「社員こそが一番の資産である」という考え方に従い、様々な社員の活性化策に取り組んできました。

 一方、かねて花王は豊かな生活文化の実現、持続的社会に貢献していくことを掲げて事業を進めてきました。ただ、近年の社会変化はかなり激しい。新型コロナウイルスの件は言うにも及ばずですが、地球環境問題の深刻化は引き続き見逃せない事項です。

 確かに花王は中長期で見ると成長を続けており、利益も出し続けています。しかし社会経済が劇的に変化する中、今後も順調に推移するとは言い切れません。

 ひるがえって、社員の皆さんは真面目で一生懸命な人が多く、日々の仕事をやり切ることで一杯になってしまう傾向がありました。また、日々の仕事に一生懸命であるがゆえに、社会情勢や会社全体の目指す方向など、大きな視点から自分の業務を捉えにくい面もありました。

――社会変化を見据えると、事業主体であり原動力である社員の存在にあらためて着目し、社員の活性化が欠かせないという判断があったわけですね。

仲本:社長の長谷部(佳宏氏)はK25を策定するに当たり、多くの社員との対話を繰り返してきました。昨年(2020年)だけで、経営幹部から若手中堅、海外も含めて、50回以上、社員の皆さんと対話をしてきました。

 そこで得られた内容、さらに世界の大きな変化を踏まえて、花王グループはどうあるべきか、何をするべきかといった内容を組み込み、K25が策定されました。「最大の資産は社員」という基本に立ち返りながら、社員活力を最大化しつつ、K25のビジョンにも掲げた「豊かな持続的社会」を実現していこうというのが趣旨の1つです。

[画像のクリックで拡大表示]
花王が2020年12月9日に発表したグループ中期経営計画「K25」の説明資料より。K25の方針(目的)の一つとして「社員活力の最大化」を位置づけ、そのツールとしてOKRを活用する(出所:花王)

――OKRに着目した背景や理由について教えていただけますか。

仲本:弊社は従来、KPIに基づく目標管理制度を導入していました。この基本的な運用方法としては、全社の戦略を掲げ、そこからカスケードダウンしていき、個々人の目標を明確にしていくというものです。事業目標に従って100パーセント達成すべき個人の目標が設定されますが、これがややもすると、社員の閉塞感にもつながっているのではないかと思われる面がありました。

――完全な達成を求める必須事項のリストは、時として個人のプレッシャーを無用に高めることにもなりかねない、ということですね。

仲本:これに対してOKRでは、目標立案の起点は、社員個人一人ひとりになります。個々人が「どういう世の中にしたいのか」「自分は何に取り組んでみたいのか」を考えます。もともと当社の社員の中には、今何をやらないといけないのか、それに従って自分には何ができるかを考えて行動できる人や、自社および自社商品に対する誇りを持って働いている人も多くいます。実際、社員に対するエンゲージメント調査の中にもその傾向が見て取れています。花王ではこのOKRを導入することで、社員の皆さん一人ひとりが持っている「世の中を良くするために仕事を通じて何がしたいのか」あるいは「自分は花王グループでどんなことを手がけてみたいのか」といった、夢や目標を臆することなく掲げてもらいたいのです。

――米グーグルによるOKRの説明によれば、目標を立てる際に、7割程度の達成率でも構わないというチャレンジングな目標を立てることを推奨しています。

仲本:はい、それも当社として注目した点です。できなかったから減点されるということではなく、目指している姿に向かってどれだけできたのかを加点的に見ていく。これもOKRを採用する決め手になりました。当社ではOKRについて「野心的な目標」を掲げ、それは「6割から7割でも十分」であるという旨を社員に伝えています。

 OKRでは目標を組織内で共有することが推奨されます。これも重要なポイントです。社員同士で目標を共有することで、例えば「この部門のこの人は、自分と同じような目標を持っているから、コンタクトしてみよう」といった、社員同士の交流と連携を促していきたいと考えています。