部門や業務内容に応じた柔軟な運用を目指す

――花王グループには多様な組織と職種があり、海外にも多数の事業所があります。どのようにOKRを浸透させていきますか。

仲本:一定の共通フォーマットや指針を(本社で)準備しますが、それぞれの部門、あるいはそれぞれの仕事に応じて適用していきます。

 当社ではOKRの本則は守りつつも「花王らしいOKR」にアレンジします。これにより、花王のDNA、本来の花王が持つ良さを引き出していく取り組みにしようというのが基本的な考え方です。

 企画開発のように新しく自由な発想が求められるような仕事もあれば、生産部門のように日々の着実な作業が求められる仕事もあります。それぞれにチャレンジがあって、そのチャレンジの在り方は異なります。そこで、各部門の各業務にうまく当てはまるような形でOKRの展開ができるよう、各部門と議論しながら進めようとしている段階です。

――OKRの作成について、社員にはどのように説明しているのですか。

仲本:次の3つの視点でOKRを作成することを、社員の皆さんにお願いしています。

 1つは事業貢献の視点です。社員一人ひとりが、どのように企業目標に貢献していくかという視点を入れます。2つ目はK25でも目標として掲げるESGの視点です。一人ひとりがESGについて考え、自分がどんな挑戦ができるのかを考えながら目標を立案します。

 3つ目は「One Team & My Dream」と呼ぶ視点です。社員一人ひとりが、自分の立場や役割を超えてほかの社員と連携していくことを考えています。また、現在の仕事とは直接関係のないことでも構わないので、やってみたいことを書いてほしい、と伝えています。

 一方であまり細かく説明しすぎないように心がけています。(各要素を説明しすぎて)何か特定の枠にはめるようなことになってしまうと、OKRを導入した本来の狙いが伝わりにくくなるためです。

 例えば事業貢献については、「経営を支えているのは社員の皆さん一人ひとりです、改めてご自身を振り返りながら、どのように事業に貢献をしていきたいのか、といった観点から書いてください」といった具合で説明しています。

――いきなり「ESGについて考えてほしい」「やりたいことや夢を語ってくれ」と言われても、戸惑う社員もいるかもしれません。

仲本:実は、社内でも様々な議論がありました。それでも、これからの花王においては、「やらなければいけないこと」ばかりではなく、「自分は(花王を通じて)何を実現したいのか」「どういう世の中になってほしいのか」を社員一人ひとりが考えて、お互いに本音で語り合っていくことが大事だという考えから、このようにしました。

 社員の皆さんのマインドセットはもちろん、部下の思いをしっかり受け止めてコミュニケーションできる組織マネジメントのスタイルを定着させるべく、研修などもセッティングしていく必要があると認識しています。

――OKRを通じて、花王グループという組織としての目標と、社員個人の目標をどのように融合させていきますか。現場でOKRをどう運用していくかが鍵になると推察します。

仲本:個人が目標を立てていく段階で、とにかく対話を大事にしようと呼びかけています。これまでも従来の目標管理制度の中で、対話の重要性は社内で強調されてきました。ただ、それは企業や組織の目標を社員個々人にカスケードダウンしていく過程で対話するという形態でした。

 一方OKRでは、まず社員一人ひとりが何をしたいのかを考えます。その中で上司や組織、それぞれのOKRと突き合わせるという格好になります。突き合わせる相手は上司だけではなく同僚や他部門の社員というケースもあるでしょう。そうした多種多様な形の対話を通じて、会社全体のOKRと個人のOKRを合わせていきます。

 それを支える仕組みとして、OKRを運用する情報システムを用意します。このシステムでは社員一人ひとりのOKRを登録し、それを相互に結びつけていけるようになっています。自分の目標が会社や部門の目標にどう結びついているのかが社員の誰もが分かるようになります。

 システムにはキーワード検索の機能を盛り込みます。社員が自分の目標に基づいたキーワードを入力すると、同じ目標を設定している他の社員を見つけて、チャットなどで声をかけられるようにもしています。これで社員同士の連携を促そうというのが狙いです。

 また、実際の運用においてはOKRの中に従来のKPIに準じた内容を入れてもいい、ということにしています。目標達成に向けてマイルストーンを設定し、それらの進捗を確認することが重要な業務もあるためです。ただ、そういった業務領域にもOKRの趣旨や内容は説明しています。