約8000人のテスターには、主婦、役者の卵、引きこもり経験者や障害をお持ちの方など、様々な方がいるそうですね。

玉塚:私は、テスターがどんな人たちなのかを知りたくて、初期の頃はブートキャンプに参加するような人を対象に、一人ひとり面接しました。人事部門から経歴書を受け取って見てみると、どこかのタイミングで引きこもっていて数年間職歴にブランクがあったり、学校を中退してから職歴が数年なかったりする人も少なくない。

 面接で私から「あなたは本当にすごいですね」などと語りかけても、私の目を見てくれなかったりする。しかし、実際の仕事となるとものすごい結果を出すわけです。

企業の営業部門や小売業の接客の現場などでは、その特質はマッチしにくいでしょうね。

玉塚:私はこの会社に来て、「デジタル領域には、テスターである彼ら彼女らが活躍できる場が他にもあるはずだ」という仮説を立てて取り組んできました。実際、その仮説は正しかった。数多くの人材が育ち、様々な領域で活躍する人も増え、エンタープライズ事業の売上高は100億円が視野に入る規模にまで成長しました。

 社内には有資格者も増えており、セキュリティ分野で国際的にも権威のあるCISSP(Certified Information Systems Security Professional)や、情報処理安全確保支援士やCEH(Certified Ethical Hacker、認定ホワイトハッカー)の合格者も出てきています。日々、私のところに報告がどんどん挙がってきていて驚きます。

デジタル領域における人材発掘業

 当社はゲームのデバッグやソフトウエアのテスト、サイバーセキュリティの仕事を手がけている企業ですが、本質は「デジタル領域における人材発掘業」だと思っています。

 今後5G(第五世代通信)の普及、そしてDX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展で、デバッグや脆弱性診断は一見、地味ではあるものの非常に重要な仕事として求められます。そして今後、間違いなく人材不足が見込まれます。そのニーズに応えて活躍できる人材を見つけ、育成していきます。

 ブートキャンプなどの教育プログラムを展開して分かったことの一つは、デバッグや脆弱性診断などの業務で求められる希有な才能は、一般的な人材評価軸では見つけにくいことです。中には、人と相対して会話をするのが難しいという方もいる。特にギフテッドと言われる人々には、そういう人が多い。そして彼ら彼女の多くは、自分の才能を自覚しにくい状態にあります(筆者注:ギフテッドとは主に、飛び抜けた才能を備えているが、能力を発揮する上でサポートを必要とする人物のことを指す)。

 そこで当社は、様々な入り口を用意しました。例えば障害を持っている、または障害を自覚している人へ、デジタルハーツプラスというグループ会社(筆者注:障害者雇用促進法に基づく特例子会社)を通じて活躍できる場を提供できるようにしています。こちらでは障害を持っている方の採用・教育、雇用環境、マネジメント体制に特化しています。これにより気兼ねなく自身の特性を開示しつつ、仕事を進めていくことができます。またグループ全体としては、NPO法人や教育機関と組んで、若年無業者の方や発達障害を持つ生徒に向けた教育プロジェクトも手がけています。

 このデジタル時代に、従来は輝きにくかった人たちが活躍できる可能性が大いにある。この背景を踏まえて当社が人材のマイニング企業、プラットフォーム企業として伸びれば、社会のポテンシャルが大きく高まるはず。4年間取り組んでみて、この読みは間違いなさそうだと感じています。