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 PC最大手のレノボ・ジャパンは従業員のテレワークを推進している。2020年春に1回目の緊急事態宣言が発令されてから、9割以上のテレワーク実施率で推移しているという。政府が事業者に「テレワークの実施7割を推奨」と呼びかけていることを踏まえると、注目すべき実施率と言える[注]。同社は2015年から「無制限テレワーク」の制度を導入、約6年にわたる試行錯誤と、2020年の新型コロナウイルスの影響による初めての緊急事態宣言を受けて、この実施率に至った。

 「当社がPCメーカーだからできた、というわけではなく、たくさんの失敗を重ねてここに至った」と打ち明けるのは、同社ワークスタイルエバンジェリストの元嶋亮太氏である。同氏は社内のテレワーク推進に携わるほか、そのノウハウを社外に発信する業務を担当する(同社「テレワークスタートガイド」などの資料URLはこちら)。

 レノボ・ジャパンは、2021年4月28日、興味深いメッセージを産業界に提示した。「テレワーク率70%を実現するために経営者がすべき3つの決断」という文書である。「役員、幹部社員は会社に来てはいけない」「テレワーク中の社員を監視しようとしてはいけない」「勤務時間中の雑談チャット、気分転換を奨励する」という3項目からなる(詳細は同社プレスリリースを参照)。

 国内ではワクチン接種が始まっているが、コロナ禍はまだしばらく続くと考えた方がよいだろう。テレワーク実践は従業員の感染を防ぐ手立てとして有効性が高い。

 政府は6月に発表した「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)」原案で、初めてWell-being(ウェルビーイング)に触れた。文脈からは心身の総合的な幸福度という意味で使われており、GDPなどの経済指標に限定せず、心身の幸福度を政策の指標に設定する方向性が読み取れる。コロナ禍での働きやすい環境づくりはこうした時代の流れにも合致する。

 レノボ・ジャパン社長のデビット・ベネット氏と、同社ワークスタイルエバンジェリストの元嶋氏の話を聞きながら、テレワーク推進と、そこから副次的に生まれるウェルビーイングな働き方のポイントを見る。


ツール、ルール、文化の3つが必要

御社の取り組みを踏まえて、従業員にテレワーク環境下でうまく働いてもらうには、何が必要かを教えてください。

デビット・ベネット氏(以下、ベネット):大きく3つあります。1つは、インフラやツール。2つ目はルールやプロセス。3つ目は、カルチャー、つまり企業文化です。これは自社の取り組みに加え、さまざまな企業のご相談を受ける中で見えてきたことでもあります。

 1つ目については、PC、マイクやビデオカメラ、使いやすいビデオ会議ツールなどですね。2つ目はマネジメントのやり方に関わるもので、テレワークの成果をどう評価していくのか、統一的な会社のルールや業務プロセスを構築して運用することを指しています。

 3つ目の文化が一番大切です。ツールやルールを使って働く従業員の考え方や習慣を変えていかなければなりません。これには時間も労力も必要です。企業からのご相談では、ここに課題があるケースは結構、多いです。いきなり大きな成功は難しいでしょうが、この3つのポイントを抑えれば、比較的スムーズにテレワークは浸透していくと思います。

 当社では2020年からの新型コロナウイルスの流行が大きな転機となりました。外部的な必然性からとも言えますが、待ったなしで取り組みを進め、現在のようなテレワーク実施率に至りました。

デビット・ベネット氏
デビット・ベネット氏
レノボ・ジャパン代表取締役社長
[注]レノボ・ジャパンでは2020年4月以降、テレワーク率は平時で約9割、緊急事態宣言中は97%~98%としている。

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