企業と従業員との間で、目標を共有し合意する

ベネット:私たちはテレワークを成功させるためには、性善説に立つことが必要だと思っています。

 当社の場合、KPIをベースにした目標管理制度を実践しています。全社の目標を掲げ、それを部門ごとにブレークダウンし、最終的にはチームのマネジャーとメンバーが話し合いながら個人の目標に落とし込みます。この仕組みによって、個々人には、いつまでに何をするのかということが明確に示されるわけです。

 このようにしてマネジャーとメンバーとの間で成果目標が合意できれば、各自にパフォーマンスが出しやすい働き方の選択を任せますし、会社としてもそれを支援しています。テレワーク環境の整備は、こうしたパフォーマンス向上に必要な投資と考えられます。

元嶋:例えば、じっと誰かに一挙手一投足を見られて動作をチェックされながら作業をしていたら、緊張するはずです。これで本当に生産性・創造性が高まるとは、考えにくいでしょう。自分がどうすればパフォーマンスよく働けるかというのは、人に聞いて答えが出る話ではなく、本人しか分からないはずです。企業側ができるのは、従業員個人に対して選択肢をしっかり用意するということだと思います。

 上司のサポートに加え、部下の適切なフォローアップは欠かせません。当社では1on1を推奨しており、1on1を通じて部下の状態を把握し、適切なフィードバックを行っています。緊急事態宣言を機に、この頻度も社内で増えている傾向にあります。

テレワークを推進するには働き方のルールも関わりますから、人事部門の関与も必要ですね。

元嶋:はい、テレワークを持続的な取り組みにするには、機器を担当するIT部門、従業員の働き方全般を担う人事総務部門、さらには経営企画部門など、社内の横連携が大事です。すべての従業員が納得ずくでテレワークを実施するには、あらゆる部門の要望や改善提案を吸い上げて早期に反映させる必要があります。成功している企業を見ていますと、テレワークのタスクフォースを設定しているケースが多いですね。

従業員満足度が上がった

コロナ禍によって否応なしにテレワークを推進している企業も多いはずですが、レノボ・ジャパンでのテレワークの取り組みからは、思わぬ果実が得られると考えられそうです。例えば企業と従業員間で目指すべき目標を再確認する、その上でマネジメントのやり方を見直す、家庭の事情がある社員に仕事しやすい環境を用意する、といった側面を見れば、企業がテレワーク環境整備に投資する意味がより明確化できそうです。

ベネット:テレワークを推進することで従業員満足度が高まりました。また、従業員満足度と業績は連動していると認識しています。従業員満足度の向上は、経営の信念として取り組んでいる事項でもあります。ですので、テレワークが従業員満足度の向上につながり、それが業績に好影響を与えているという好循環に入っていると明言してよいと思っています。

 個々の仕事のシーンを見ても、テレワークのメリットはいろいろあります。例えば、テレワークはミーティングの効率性が高いと言えます。移動が不要ですし、バーチャル空間上ではあるものの、相手の顔を見ながら密なコミュニケーションがとれるからです。

 ただ負の側面も見逃せません。効率性が高いために仕事の密度が上がりすぎることや、仕事の場と生活の場が分離しづらいので気分転換が難しいという側面もあります。

 当社が今年4月に発表した提言でも示しましたように、就業中の気分転換を推奨しています。仲間との雑談チャットは、常識の範囲内ならオーケーです。また、スケジュール上問題なければ、運動不足を解消するために近くの公園に散歩しに行ったりしてもいい。

 バーチャルだとその人が持つ全体的な雰囲気は伝わりづらいこともあります。人間同士の信頼関係は良い仕事のベースになりますから、フェース・トゥ・フェースがやりにくい中でも、仕事の話を抜きにした、気兼ねない交流の機会を設けることが必要です。