オンラインでも工夫すれば「深い交流」が実現する

交流の機会として用意しているものはありますか。

ベネット:当社では「わくわく隊」というボランティアベースのイニシアチブが先導し、様々な取り組みを進めています。

 コロナ禍に入ってから実施している活動の1つが「運動会」です。参加メンバーそれぞれが個別に目標を掲げながら運動し、その結果を共有します。オンライン上における従業員同士の交流と、テレワークで起きがちな運動不足の解消を狙おうというものです。また、オンライン上で家族の方々も参加していただくクイズ大会を実施したりしています。

 マネジャーにもベストプラクティスとして推奨している活動の1つが「コーヒータイム」です。これはオンライン上で声を掛け合って、ある特定の時間に、一切仕事の話をせずに交流するというものです。

 個人的に良いなと思ったのが、「バーチャルディナー」ですね。みんなで同じお店から同じ飲み物や食事を取り寄せて、同じ時間帯にオンラインでつながりながら食事をします。一緒に同じ体験をしている感覚を持つことができ、とても興味深かったですね。

 当社にはいろいろな部活動があります。「eスポーツ部」もその1つでして、私もそのメンバーです。オンライン上で対戦できることもあって活動は盛んです。プレー中に「デビッド、いけよ」と従業員から声をかけられたりしています。こういう立場を越えた交流でお互いの人となりを知ることができます。

 当社は、東京だけでなく(山形県)米沢など国内各所にオフィスがあります。オンラインのイベントや活動であれば、物理的な距離に関係なく交流できます。総じて、立場も場所も越えて社員が仲良くなって、温かい雰囲気が出てくるというのは、組織にとって非常にプラスになると思っています。

「取りこぼし」をなくすためにも継続的に取り組むべき

本当にテレワークだけで企業活動は継続できるのでしょうか。

元嶋:これまでの経験から、9割方のコミュニケーションやコラボレーションはオンラインで代替できると考えています。もちろん、製品を前にして意見を交換したりといったケースではオフィスワークが必須です。オンラインでできる範囲はかなり広いものの、オフィスワークも柔軟に組み合わせることが重要だと認識しています。

ベネット:新入社員のフォローは今、大きな課題ですね。社員に会ったことがない、知らないという状況は、本人たちには厳しいものがあります。様々なオンラインの場に招いて社内の雰囲気を見てもらうなどなるべく多くの機会を設けることに取り組んでいます。

コロナ禍以降のテレワークで従業員のパフォーマンスが落ちたケースはありますか。

元嶋:オンラインに切り替わったことが原因とされるケースは、弊社の場合は幸いにしてほとんど見られていません。テレワークに取り組み始めた初期の頃に実施した社内アンケートでは、テレワークになったことで生産性が下がったという回答は全体の3%でした。

 ただ、組織としてその3%をケアすることが欠かせません。例えば、オフィスなら分からないことを隣の人にすぐに聞けば良かったが、それが難しくなったという声がありました。これらは先ほど紹介しました1on1の密度を上げること、チャットなどのツールを用意すること、マネジャーへの研修、わくわく隊の活動などの施策を通じて引き続き取り組んでいます。

総じて、テレワークはコロナ禍対応だけにとどまらない効果がある一方、良い結果を出すには、長距離走とまでは言わないまでも中距離走を走るつもりで取り組む必要がありそうですね。

元嶋:先ほどの社内アンケートでは、「テレワークをした次の日に出社したところ、マネジャーから『昨日は有給だったんだよね』などと言われた」という従業員の声がゼロではなかったのです。おそらく、今テレワークを推進している組織では、これに似た状況が起こっているのではないかと推察します。

 「会社に来た従業員だけで議論が進み、テレワーク中の従業員が置いてきぼりになる」というのはその典型例です。全社で主従関係を変え、テレワークが標準的な働き方であり、そこで意志決定も行われるとなれば、「必ず会議にはオンラインをセットすること」というルールを通じて全社に浸透させられます。社内アンケートなどで継続的に従業員の実態をきちんと見ながら、しかるべき手を打ちつつ、部門横断的に、そして時間をかけて取り組むべきと考えています。

家族関係が良好であることや健康度は仕事のベースですから、それがパフォーマンスに寄与しているとも考えられますね。

ベネット:テレワークは総じて従業員の満足度を高めます。従業員からは「仕事をこなししつつ、家族と一緒に過ごす時間が増えて良かった」という声がありました。また「健康になった」という声もありました。もちろん様々な前提条件ありきのことですが、テレワークは世間一般で言われている以上に、働き手個人と組織に大きく寄与しているのではないかと思っています。