楽天が、企業経営の軸に「ウェルビーイング(Well-being:より良く在ること、幸福であること、あるいはそのような状態を示す言葉)」という言葉を掲げている。2019年、経営陣にCWO(チーフウェルビーイングオフィサー)のポストを設けた。

 CWOに着任したのは楽天創業メンバーの1人であり、同社の祖業であるEC(電子商取引)事業の責任者も務めてきた小林正忠氏。小林氏は「個人」「組織」「社会」という3つの層を定義し、それぞれの側面から楽天のウェルビーイングを高める取り組みを進めている。

 CWOの小林氏に、楽天にとってのウェルビーイングとは何かを聞きながら、産業界が追求するべきウェルビーイングの本質を探るシリーズの第2回。前回は、ウェルビーイングに対する基本的な考え方、具体的なアプローチの例、さらには小林氏が楽天のCWOに着任した経緯を聞いた。

 「実は、楽天が事業を通じて目指してきたのは、(地域や社会の)『良い状態』、つまりウェルビーイングだ」と語る小林氏。自社・楽天のより良い状態、すなわちウェルビーイングを探る中、社員やチームにおけるBeing(在る)とDoing(行動する)のバランスが大事だとの持論に至ったという。

小林 正忠(こばやし まさただ)氏
楽天 CWO(チーフウェルビーイングオフィサー) 常務執行役員
1994年慶應義塾大学卒業(SFC1期生)。97年楽天創業から参画し、ショッピングモール事業責任者として営業本部、大阪支社、マーケティング部門、国際事業等の立ち上げを行う。70カ国・地域を超える多国籍な人財を有する組織となり、国内19支社・グローバル30カ国と地域に事業拠点が広がる中、国内外におけるマネジメント手法の違いを経験。2012年4月米州本社社長、2014年9月アジア本社社長に就任。2017年末にアジア代表を離れ、現在はCWO(チーフウェルビーイングオフィサー)を務める。2001年慶應義塾大学に「正忠奨学金」を創設するなど若者の育成にも注力。2011年世界経済フォーラムYoung Global Leadersに選出。慶應義塾大学SFC特別招聘教授。5児(息子2人娘3人)の父。(写真提供:楽天)

小林氏(以下、敬称略):今はコロナが流行しているため、企業では可能な限りリモートワークで勤務することが推奨されています。当社も原則リモートワークを行っていますが、リモートワークは非常にDoingを進めやすい労働形態です。移動にかかわるコストは極小化されます。それもあってミーティングは効率的になります。仕事の生産性は上げやすいと言っていいでしょう。

 あらためて考えると、企業という組織はWell-beingではなく、いわばWell-Doing(ウェルドゥーイング)で回っている存在です。むしろ、そればかりに偏りがちです。

 ただ、私がウェルビーイングの観点からしばしば申し上げるのは、本当により良く働くためには、DoingとBeingのバランスが大事だということです。私は特に(コロナ禍で)このような状況にあるからこそ、2つのバランスが大事だと考えています。