DoingとBeingのバランスが大切

 小林氏によると、人間にはそれぞれにDoingとBeingの状態があり、個人かチーム(小林氏は「みんな」という言葉を使う)であるかによって区別できると述べる。

 個人のDoingとは例えば、企画を練り資料を作ること、あるいは読書といったことが挙げられる。個人のBeingには、散歩や瞑想などがある。

 一方、チームのDoingには、会議、商談、社員同士の合宿などが挙げられる。チームのBeingには、社内のイベント、カフェテリアでの何気ない雑談といったものがある。

 ハードワークが長く続いて疲弊したとしても(Doing)、十分に心身を休めた後であれば、徐々に活動を再開したくなるものだ(Being)。また、人は隠し事をせず自分のことを開示する相手に親近感を持つという。社内のイベントやカフェテリアでの雑談は、チームメンバー同士の理解と共感、ひいては親近感の醸成を促す。これが生産性の高いチームづくりに貢献することは想像するに難しくない。

小林:リモートワークが普及したことで、個人での活動は、DoingもBeingも効率的にできるようになっています。「みんなでDoing」も、リモートで意外にできます。むしろ移動コストがかからないため、より効率的・効果的に回せる可能性もあります。

 しかし、「みんなでBeing」は現状、これという良い手立ては見つかっていません。リモートでなく対面で集まればこそできるという側面がDoingよりも強いためです。「組織のウェルビーイング」(筆者注:組織がより良い状態であること、前回を参照)を高めていく上では課題となります。

 いま、CWO以下のチームで、これをどうやったら解決できるのか、いろいろな角度から試しているところです。

 試案として取り組み始めている一例が、「Huddle Empowerment」だ。Huddle(ハドル)とは「一緒に」の意味で、楽天ではチームごとに行う朝礼や夕礼のような位置づけのミーティングだ。「Huddle Empowerment」はCWO管轄下の組織であるウェルネスチームが進めている活動だ。チームメンバーがリモートワーク下のミーティングに顔を出し、最初の数分間、ストレッチや軽い運動をナビゲートする。

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ウェルネスチームが進めている「Huddle Empowerment」の取り組み例。オンラインミーティングにゲスト参加し、最初の数分間、軽く体を動かすフィットネスをナビゲートする(画像提供:楽天)

小林:体を動かすのはほんの数分間ですが、やはり健康的な感覚が高まります。また、オンライン上であっても、体を動かす体験を一緒にすることでコミュケーションも円滑になります。これを通して、「ワンチーム」が醸成されます。これがHuddle Empowermentの効果です。

Huddle Empowermentのほかにも、オンラインセミナーを実施しています。この前は、お昼休みの時間帯に医療の専門家をお呼びして、効果的な休息のとり方や、正しい姿勢のレクチャーなどをしていただきました。

 楽天は従来から「みんなでBeing」に力を入れてきました。夏期にはハワイアンスタイルや浴衣で出社するイベントを催したり、秋はハロウィンにちなんだイベントを開催したり。今はこのようなオフラインの活動はできず、オンラインイベントに切り替えています。

 引き続きウェルネスチームをはじめ、社内の様々な部署と一緒に可能性を探っていますが、オフラインだからできたと考えられてきた「みんなでBeing」も、工夫をすればオンラインでもできるかもしれません。

 Huddle Empowermentに近い取り組みがもう一つある。それは三木谷氏(楽天会長兼社長)以下、役員らが一堂に会する“オンライン・ラジオ体操”だ。ラジオ体操という言葉から「昭和な会社」を想起させるかもしれないが、オンラインだからこそできる趣向のイベントとなっている。

小林:緊急事態宣言が出た4月からは、三木谷以下、役員同士がオンラインで毎朝ラジオ体操と瞑想をしているんです。今日も、三木谷と一緒にやりました。まずは3分間、ラジオ体操。次に瞑想。終わったら、「じゃあ今日も頑張ろう、また」という感じです。

 この夏には、社員や、そのご家族も巻き込んで一緒に参加するイベントに発展させました。これはオンラインだからできることです。このようにして社員をその家族も含めてサポートすることは、個人や組織のウェルビーイングを高める上でとても大事だと思っています。なお、社員向けラジオ体操は別途開催する予定です。

(※社員向けラジオ体操は9月から開始した)。