世界のベストプラクティスを日本向けに発信

 CWOの小林氏以下のチームがウェルビーイングを掲げて取り組むリモートワーク下の様々な課題は、「ウィズ・コロナ」の時代における企業課題の典型例といえるだろう。つまり、楽天だけに限らず、日本の多くの企業が直面している共通課題である。

 小林氏管掌の組織である「楽天ピープル&カルチャー研究所」は2020年7月、「コレクティブ・ウェルビーイング」というガイドラインを公開した。同研究所は2018年10月に設立。グループ内の研究組織として企業文化や人と組織の新しい関係性について専門的にリサーチしたり、体系化していく組織だ。ガイドラインではコロナ禍により働き方を変更せざるを得なくなった企業組織に向けて、持続的なチームの在り方を提唱し、さらには具体的な施策などを解説する。

 特徴は、「余白」という概念を重視していること。具体的には、「仲間」「時間」「空間」という3種類の要素を意図的に設計し、それぞれに雑談や計画的休息といった余白を設けることを提唱。ガイドラインでは、これらをまとめて「三間(さんま)+余白」と呼ぶ。同研究所は「短期的な生産性を追求する上では成果に結びつかないように思われがちな『間(余白)のデザイン』こそが、持続可能なチームづくりのポイントになる」としている。

[画像のクリックで拡大表示]
楽天が提唱するコレクティブ・ウェルビーイングのエグゼクティブ・サマリーの一部。企業(マネジメント層)に向けては自社の「軸」を再構築し人材を引きつけるためのチェックリスト、個人の働き手には自己の在り方を見直すための「問い」を設けた。(出所:楽天ピープル&カルチャー研究所

 小林氏は「このラボは、最終的には楽天グループのために存在しているわけではない」との趣旨を強調する。

小林:楽天ピープル&カルチャー研究所が進めている重点的な活動の1つは、インプットです。欧米企業の新しい取り組みについて、メンバーが現地の専門カンファレンスに出たり論文を調べたり、企業でHR実務に携わっている人たちに直接ヒアリングしたりします。

 もう1つは実践です。楽天グループは、日本企業という枠組みの中においては、考えうるあらゆる組織形態を持ち合わせています。例えば日本人だけの組織もあれば、外国籍の社員が入り混じった組織があります。新卒採用の社員がたくさんいる組織もあれば、中途採用の社員ばかりで構成された組織もあります。ごく少数の従業員からなるチームもあれば数千人規模の組織もある。日本企業で典型的に見られる地方支社も持っています。

 そこで、研究所でインプットした内容を楽天グループ内のこうした拠点に展開し検証していきます。「このフレームワークはこのような形態の組織ではうまくいった」「ここは変える必要があるよね」、といった実践的なノウハウを楽天で確立し、日本の産業界に発信していきたいと思っています。

 よく西海岸(シリコンバレー系テック企業)で提唱された新しい人事施策やフレームワークが産業界で注目を集めたりしますが、言語の違いもあって、日本にそれらが本格的に上陸するまでに数年のタイムラグが生じているからです。

 まずは楽天で実践できるか検証するわけです。これにより、日本の産業界に対して意義のある内容を提案していきたいと考えています。

 今後も各分野の専門家の方々と一緒に議論しながら、インプットもアウトプットも進めていきます。