「コレクティブ・ウェルビーイングのガイドラインは、アドバイザリーボードと一緒に議論して仕上げた」(小林氏)という。アドバイザリーボードとは、楽天ピープル&カルチャー研究所が設けた専門的な知見を得るための外部協力チームである。メンバーには人材開発や組織開発、あるいは医学やスポーツなど各分野の著名な専門家が名を連ねる。

 例えば、調査会社米ギャラップでマネージング・パートナーを務めるラリー・エモンド氏だ。同氏は「ストレングスファインダー」の開発を主導した人物として知られている。ストレングスファインダーは被験者の思考、感情、行動の特徴を調査・診断する手法である。

 ほかにも米ハーバード・ビジネス・スクールの経営学教授で組織行動学を専門とするセダール・ニ―リー氏、予防医学者でウェルビーイングをテーマにした研究を進めている石川善樹氏、GE日本法人やLIXILグループで人事の責任者を務めていた八木洋介氏(people first代表取締役)、スポーツ界からは日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターを務める中竹竜二氏(チームボックス代表取締役)、経営学では永山晋氏(法政大学准教授)が加わっている。

 このような陣容を踏まえて考えると、楽天は今後、この楽天ピープル&カルチャー研究所を通じて、組織と企業文化に関するコンサルティング業務を展開する可能性もありそうだ。

「間」は成長を促す

 CWOである小林氏自身も、業務を進めるうえで「間」を重視しているという。

小林:個人的にも、コレクティブ・ウェルビーイングで提案している「間」の概念は大事だと思っています。人はあえて余白を作ったほうが成長できるからです。

 人は余白がないと持続しません。ここで言う持続とは、ただ持続すればいいとか、人で言えばただ長生きすればいいとか、そういう意味ではありません。昨日とは1ミリでもいいから違うことをして成長することが大事だと思っています。それが、人のウェルビーイングな状態なのだろうと思います。

 小林氏はCWO管轄下の3チームに対して、「従来の業務を9割の労力および時間内で済ませられるように工夫をしてほしい」というリクエストを提示しているという。残りの1割の時間は、他のチームの業務を支援することに当てる。

小林:こうすれば、自分のチームの目線が、他のチームに対する洞察となります。これは互いに良い影響を与えるだろうと思っています。

 チームのみんなに対しては常に、個人そして組織としての成長余地を確保しておきたい。また、私自身も、余白の意味や意義を確かめていきたいのです。

「ヒューマンキャピタル」のほうがふさわしい

 楽天の創業から23年が経過した。三木谷氏を始めとした6人で「楽天市場」を始めた頃から、今や2万人の企業グループに成長した楽天を長く見てきた小林氏は、楽天の成長を支えてきたのは、人と事業を支える思いなのだとの趣旨をあらためて強調する。

小林:私は「ヒューマンリソース」というより「ヒューマンキャピタル」という言い方のほうがふさわしいと思うんです。もっと簡単に言えば、一緒に働いている人たちは「仲間」です。仲間ってすごく大事ですよね。仲間という考え方は、人がより良く働くために非常にファンダメンタル(基盤であり基本的な要素)なことだと思っています。

 一人ひとりのこの人生は、誰でも平等に一度きりです。今一緒に働いている仲間は、その一度しかない人生で、今、目的や時間や場所を共にしている。その仲間が疲弊している会社があったとしたら、それは全然サステナブルじゃない。だからこそ(人も組織も)ウェルビーイングであることはとても大事だと思うのです。

 楽天を通じて、組織の未来、ひいては日本の未来にとって必要なラーニング(学び)をしていくつもりです。

 我々のミッションは、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」ことです。エンパワーメント(後押しする)という考え方は、創業時からずっと大事にしていることです。

 イノベーションを起こすためには、挑戦しなければいけない。その挑戦の意味や意義が、理解されにくいこともあります。けれども、それでもミッションに従って進んでいく。まだまだ道半ばですけれども、そんな感じでやっています。