いまだ産業界全体には「Being」を整えること、つまり自分の感情の状態や自分を幸せにする要素に時間をかけて向き合うことについて、「生産していない」「組織の目標達成とは関係ない」といった理由から、望ましい行動ではないとされる傾向も強い。

島田:確かに、「自分の内側の状態に向き合う」という行動はこれまで「弱い人間がするものである」という印象が強かったように見受けます。会社のために猛烈に働くことが格好いいと見なされていた時代背景もあったのでしょう。また、ウェルビーイングという言葉は感覚的に捉えられやすく、それが産業界で受け入れられてこなかった理由だと思います。

 一方、ポジティブ心理学では過去20年間以上かけて研究が進んでいて、ウェルビーイングで非常に興味深い研究結果が示されています。現在分かっているのは、自身のウェルビーイングを追求している人は、パフォーマンスが高い。創造性が高い。社会的な活動にも積極参加する。レジリエンス(逆境から復帰する能力)が高い。健康で長寿、さらには免疫が高いということまでも明らかになっています。米カリフォルニア大学リバーサイド校心理学教授のソニア・リュボミアスキー氏の研究結果などは特に興味深いです。

 つまり科学的に検証されている概念ですから「ビジネスの現場にはウェルビーイングは関係ない」とはもう言えないはずです。そもそもウェルビーイングはシンプルで明確な話なのに、KPIを持ち込んで計測しようなどとするから、逆におかしなことになる。

 産業界全体で、人の感性的な領域をどう捉えるかということについて、パラダイムが少しずつ変わってきています。(計測されたものや明確な関係性に基づき議論する)ロジックと感性の両方が大事です、というメッセージが受け止められやすくなってきました。従来のロジカルなアプローチに加えて、例えば人の感情をキャッチする能力や、目に見えていないけれども大事な要素を捉える感覚を兼ね備えたリーダーは、これからの時代はすごく強いと思います。

自分のBeingを大切にした結果

 島田氏が自分のBeingを素直に表現してきた結果が、ユニリーバでの先取的な施策に現れているのではないか。

島田:私は昔から「宇宙人みたい」などと言われてきました。それでも私は感じたことをそのまま言い、やりたいと思ったことをそのまま実行してきました。周囲が「これが普通だ」と言うことでも、自分が普通ではないと感じたら、その感覚に従ってきたのです。この私の特性は、これまでの(ユニリーバなどで)取り組んできたことのベースに存在していたように思います。

 私が社会人としてキャリアを歩み始めてユニリーバは3社目なのですが、ユニリーバにいる今は、さらに私らしく在ることができるという自覚があります。ユニリーバという場が私を受け入れてくれて、応援してくれているという感覚があるのです。

 会社には会社が持っているパーパス(目的、存在意義)がある。また、私自身にも私のパーパスがある。今、その2つがすごく合致していると感じています。