米国で人的資本の情報開示を法制化する動きが進んでいる。法案は2021年6月に連邦議会の下院を通過し、上院の審議に入っている。企業に開示を求める項目は8つだ。その内容を紹介するとともに、なぜ企業の自主性に任せずに法律で義務化しようとしているのか、その理由を法案原文から読み取る。

(写真:123RF)
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 米国の連邦議会で人的資本の情報開示に関する法案「S.1815 - Workforce Investment Disclosure Act of 2021」が審議されている。これが成立すれば、米国の上場企業に対して人的資本の情報開示が法律で義務づけられることになる。日本企業にとっても、その影響は無視できない。この内容が国際的な情報開示のモデルになる可能性があるからだ。

 すでに2020年11月、米証券取引委員会(SEC)がすべての上場企業に人的資本に関する情報開示を義務づけているが、開示内容は各企業の自主性に任せている。今回の動きは、それを法律によって義務化するだけでなく、開示すべき8項目を以下のように具体的に指定している。どれも基礎的な情報だが、カバー範囲は広い。

  1. 労働力の人口統計情報(フルタイム、パートタイム、派遣(臨時、契約)従業員の数など)
  2. 自発的離職率と保持率、非自発的離職率、内部雇用率、内部昇進率など、労働力の安定性の情報
  3. 労働力の構成(上級管理職を含む従業員の多様性に関するデータやポリシー、監査、プログラミングの支出など)
  4. 労働力のスキルと能力(従業員のトレーニングとクロストレーニング、訓練時間、訓練コスト、利用率など)
  5. 労働力の健康、安全、ウェルビーイング(怪我、病気、死亡による頻度、重症度、時間のロスなど)
  6. 労働力の報酬とインセンティブ(給与と賃金、手当などのコスト、有給休暇、失業保険への拠出額など)
  7. 労働力の採用とニーズ(大学の学位を必要とする新しい仕事のシェアや雇用の質など)
  8. 従業員の関与と生産性(労働者の関与、生産性、ワーク・ライフ・バランスのイニシアチブなど)

 項目ごとの公開基準はSECが作ることになっている。法律の制定から2年以内に基準を策定できなかった場合、ISO30414またはその他の規則やガイダンスを用いると書かれている。

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