人的資本や知的財産などの無形資産が企業価値の中心になりつつある。「先行き不透明」な環境が常態化する中、投資家は非財務情報で企業を評価するようになった。投資家心理の変化について、三菱UFJ信託銀行でファンドマネジャーを務め、現在は同行のアセットマネジメント事業部責任投資推進室責任投資スペシャリストの領家広晴氏に話を聞いた。

――米証券取引委員会(SEC)が人的資本の情報開示を義務化するなど、投資家が非財務情報を重視するようになった背景は何でしょうか。

領家広晴氏(以下、領家):米S&P500社の市場価値の構成要素を見てみましょう。1975年は市場価値の83%を有形資産(財務資本)が占めていました。ところが、2015年になると有形資産の割合はわずか16%にまで下がり、無形資産(人的資本、知的資本、製造資本、社会・関係資本、自然資本)が84%と市場価値の大半を占めるようになっています。

 この事実は、時価総額ランキングのトップ5の顔ぶれを見ても明らかです。1975年のトップ5は、米IBM、米エクソン・モービル、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、米3Mでした。しかし2021年3月末のトップ5を見ると、いわゆるGAFA+M(グーグルの米アルファベット、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン、米マイクロソフト)です。有形資産をほとんど持たず、人的資本と知的財産中心の企業が膨大な企業価値を創出しているのです。まずは、このことをしっかり認識する必要があります。

領家 広晴(りょうけ ひろはる)氏
三菱UFJ信託銀行 アセットマネジメント事業部 責任投資推進室 責任投資スペシャリスト
慶応義塾大学商学部卒業。東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社後、国内株式アナリスト、外国株式ファンドマネジャーを経て、国内株式ファンドマネジャー(アクティブ)として、年金等長期資金の資産運用業務に従事。ガバナンスコンサルティングのリサーチ業務を経て、2019年12月より現職。現在は、足元で起きているESG課題などについて社内外に情報を発信している。(撮影:稲垣 純也)