統合報告書やHRリポートを手掛ける人事担当者に朗報だ。2021年4月15日、人材マネジメントに関する国際標準規格「ISO30414」の日英対訳版が日本規格協会(JSA)から発行された。同協会のウェブサイトから購入できる。日本において人的資本の情報開示の加速が期待できる。

 人的資本の情報開示に関する指標やデータ算出方法などのガイドラインとなる、ISO30414。国際標準化機構(ISO)が2018年に初版を発行したが、最近にわかに注目を浴びている。背景に、ESG投資の高まりや情報開示の義務化がある。既にISOの公式サイトから英語版PDFを入手した人事担当者も少なくないだろう。

 ISO30414は、人的資本に関して11の領域を規定している。和訳すると「コンプライアンスと倫理」「コスト」「ダイバーシティ」「リーダーシップ」「組織文化」「組織の健康、安全、福祉」「生産性」「採用、異動性、離職率」「スキルと能力」「後継者の育成」「労働力の可用性」となる。

 11領域のそれぞれに、細かい指標が規定されている。例えば1つ目の「コンプライアンスと倫理」には、「提出された苦情の数と種類」「締結された懲戒処分の数と種類」「コンプライアンスと倫理に関するトレーニングを完了した従業員の割合」「外部関係者に照会された紛争(訴訟を含む労働力関連の紛争など)」「外部監査の結果とこれらから生じるアクションの数、タイプ、ソースなど」の5項目がある。11領域の指標を合計すると48項目に及ぶ。

 48項目には、財務情報と異なり可視化や定量化が難しいものもある。例えば「生産性」領域の指標に「従業員あたりの税引き前利益/収益/売上高/利益」「人的資本のROI(投下資本利益率)」がある。人事戦略において投資と考えられる人件費には採用、育成、リテンションコストなどがあるが、これらへの投資効果を定量的にどう示したらよいか。これまで日本企業の多くの人事担当者が、人事戦略において重視してこなかったであろう指標を突き付けられたことになる。

 ましてや36ページにわたる英語版PDFだ。「語学の壁」に突き当たり、さらに規格の趣旨の理解に頭を悩ませる人事担当者も多かったことだろう。こうした中、ISO30414対訳版の発行は朗報だといえる。日本規格協会(JSA)のウェブサイトから購入できる。企業のHRリポートや統合報告書における人的資本の情報開示に、弾みがつくと予想される。

 ISO30414日英対訳版の翻訳と校閲を担当したピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会(PA協会)に、翻訳の際の工夫と対訳版の活用法を聞いた。詳細はインタビュー「ISO30414日英対訳版が発行、これを知らずして今後の人事政策は作れない」を参照してほしい。